22.芥川賞
 先ごろ、芥川賞の発表がありました。受賞したのは、金原ひとみさんと、綿矢りささんの二人です。受賞作品は「蛇にピアス」と「蹴りたい背中」です。最年少受賞ということで話題になりましたが、それよりも凄いのは作品の中身です。

 文学作品の値打ちは人それぞれが感じるものですが、とにかく描写がリアルで、情景が浮かんでくる文書力は「凄い」の一言で、19歳、20歳の方が書いたとは思えない程です。社会状況が文学に影響を与えるのか、優れた文学作品が社会に影響を与えているのかは分かりませんが、とにかく、これらの作品には今の社会情勢が良く反映されています。
 少し理解しがたい部分もあるのですが、それは読み手が、知らないうちに社会からずれてきていると言う警告なのかも知れません。何しろ、芥川賞をとる程、文壇から評価されている作品なのです。

 私が10代の頃の芥川賞を受賞した作品に、「限りなく透明に近いブルー」や「エーゲ海に捧ぐ」がありました。当時、受賞に値するか否か議論されていた記憶があります。文学とは言えないだとか、何を伝えたいのか分からないと、当時の主流派と思われる所から批判がありました。
 ところが高校生だった私たちは、自然に新しいその作風を評価し、今までと違った作家の登場を歓迎したのです。新しい時代を切り裂くほどインパクトのある作品の登場は、それまでの作品を追いやりました。それ以降、私たちは新しい作品に傾注していったのです。

 誰かが新しい階段を築きそこに上ると、そこからの眺めは今までと違います。 高いところから見る景色は、地面から見ることが出来ないものを見せてくれ、より遠くまで見渡せます。
 次に続く人は、誰かが築いてくれた階段まではたやすく昇れます。そして、もっと良い景色を見るために、そこを土台として次の階段を作り始めます。前任者が苦労して築いた所が、次の人のスタートになるのです。新しい時代を切り拓いた人が到達したポイントが、次の時代を築く人たちのスタート地点となります。こうして時代は進歩していきます。

 それまでの通説と言われるものが固まってしまうと、時代は新しいスタイルのものを登場させます。当時感じたものが、今再び感じられます。彼女たちがこの先どうなるか分かりませんが、文壇に新しい風を送り込んだのは確かです。

 ただ違うのは私の感じ方で、当時は新しい作品を歓迎して受け入れたのですが、今は歓迎しつつも理解に苦しむ所があることです。今の社会と、感覚のズレが生じないよう心掛けておきます。

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