17.LET IT BE NAKED
 ビートルズ「LET IT BE NAKED」を聴きました。ビートルズを聴くのは久しぶりです。オリジナルアルバムは殆ど持っているのですが、LPレコード盤のため聴けない状況が続いています。「LET IT BE」は1970年に発売されたアルバムです。(日本では翌年。)ビートルズのアルバムで最初に買ったのが「LET IT BE」で、これまで何度も聴いています。

 最初は「GET BACK」の演奏から始まりました。とても懐かしいリズムです。「THE LONG AND WINDING ROAD」はシンプルに生まれ変わっていました。というよりも本来の姿となっています。
 実は、発売当初このアルバムの評価はそれほど良くなかったのです。プロデューサーが録音テープを編集、曲によってはオーケストラで飾り立て軽快な音になり、当初あった、ありのままの表現と言う前提がなくなっていたのです。

「オリジナルな録音の持っていた唯一の埋め合わせ的な美点の正直さがすっぽりと影をひそめ、その代わりに、正直さを目指す部分ではまつたく見当たらない、あきあきするほど快楽に満ちたレコードが誕生した。」(1979発行の THE BEATLES ILLUSTRATED RECORDから。)
 幸か不幸かオリジナルな音でなかったことから、21世紀に「NAKED」として発売されることになったのです。実に33年の歳月が経っています。元々、複数のダビングやスタジオ装置による効果を放棄して録音されたため、飾らない音が本当なのでしょう。

 今回聴いてみて、曲によってはオーケストラなどの入った音に親しんでいるため、シンプルすぎると言う印象さえ持ちました。不思議なものです。メンバー達はこの音を世に出したかったのでしょうが、一度音が編集されて市場に送り出されてしまうと、それが本物になってしまったような気がします。一度世の中に出て影響を与えたものは、元に戻らないものです。
 どちらの「LET IT BE」も好きですから、今オリジナルの音を聴けたことは素直に嬉しいことです。

 それにしても「なすがままに(LTE IT BE)」と「ありのままの(NAKED)」を組み合わせたタイトルは、音楽の歴史を変えてしまったメンバーが、商業主義に囚われないで原点に戻って好きな音楽を追求したいと言う意思の表れのような気がします。社会的に無名の頃は、自由に好きなことが出来たのに、人に影響を与える所に立つと、ありのままの自分で、自然な気持ちでやりたいことが出来なくなるものです。
「GET BACK」の叫び声が聴こえてきます。アップルの屋上のシーンが浮かんできました。社会に対して何を叫んでいたのでしょうか。

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