平成19年6月21日(木)
@.平成19年6月
 和歌山県議会一般質問内容・答弁
     【 質問内容一覧 】
        (1)企業誘致について
        (2)観光医療立県和歌山の取り組みについて

  おはようございます。最初に、統一地方選ではご支援を賜り、県議会に送り出していただきました全ての皆さんに深く感謝申し上げます。また先輩議員、同僚議員の皆さま方には、是非ともご指導いただきますよう、よろしくお願いいたします。そして初めての議会で早速、一般質問の機会を頂戴いたしましたこと、感謝申し上げ、質問させていただきますのでよろしくお願いいたします。
 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告を行ないました二点について質問をさせていただきます。

(1)企業誘致について
 最初に企業誘致について質問いたします。
 和歌山市の産業は古くから住友金属花王に代表される重厚長大型の産業構造で、今も余り変わっていない状況です。経済成長の時代には、和歌山県の工業製品出荷額の伸び率では上位に位置していましたが、今では全国で最下位に近い位置にいます。
 一方、和歌山市も景気回復の兆しが見られると言われていますが、域内経済をリードしているのは住友金属などの産業です。既存の産業が好調なのは喜ばしいことですが、それでも全国的には低位に位置しています。

 その理由として、他府県では産業構造の転換が図られているのに対して、和歌山県の産業構造は従来のままであることに起因しています。山形県(パイオニア)や熊本県(日産自動車)などは、重厚長大の時代には経済規模は全国的には低位でした。しかし現在は電子機器や電気部品などの高機能材料の企業誘致に成功、産業構造の転換に成功しています。これらの県内の工業製品出荷額に占める高付加価値産業が生み出す利益は約50%に達しているのに対して、和歌山県の場合これらの産業が占める割合はわずか5%程度に過ぎません。
 産業集積のために必要なものは、分業、専門化、高付加価値化の手順で、いきなり高付加価値産業に到達することは出来ませんから、産業構造の転換が遅れたことが和歌山県の経済停滞要因の一つだと言えます。

 では和歌山県が今から同じ取り組みをしたとしても、同種の産業構造の転換が図れるかというと疑問です。何故なら、現在稼動している、また稼動しようとしている工場は2005年頃に工場新設や移転を行なっていますが、既に近隣の用地で適地を見つけています。産業構造を転換する意味はある訳で、ひとつの基幹産業が立地すると、それに付随して周辺産業が集積するのです。そのため先行して企業立地に取り組んでいる府県がリードしているのは当然のことです。

 さて和歌山県の場合はどうでしょうか。今からでは、単に企業誘致を図るのではなく、和歌山県発の新産業を創造するくらいの意気込みが必要だと思います。企業への訪問活動においては、和歌山県の将来像を語れる、和歌山県の将来の産業について夢を語る、ことから導入し、そのため和歌山県に進出することは企業にとってメリットがあることを営業して欲しいと思います。

 さて、産業政策には三つの手段があります。
 ひとつ。県外から和歌山県への企業誘致です。他府県との競争が激しい空中戦ですが、企業誘致が図れたら即効力が期待出来ます。
 ふたつ。今ある企業に力をつけてもらうことがあります。新しいビジネスを育成することや地場産品の販売力を強化すること、そのためには国や県の支援施策を講じて研究開発や販売ルート開拓の支援をすることが必要です。
 みっつ。基幹産業の裾野を広くすることです。豊田市のおけるトヨタ自動車のように、本体があって部品などの製造会社が周囲に存在している状況を生み出すことです。

 そこで必要なものは、産業振興ビジョンです。企業誘致の目的は、雇用を生み経済活動を活発にすることで私達の生活を豊かにすることにあります。どんな生活を、どんな経済活動を志向して、豊かな郷土を創るのか目標を定め、それに合った企業に誘致活動を行いたいところです。ですから、まず私達の生活の安定を前提にしたとところです。
 ところが現状はそうなっていないと思われる節があります。和歌山市に暮らす私達の消費生活からの推測ですが、所得が100あるとして(分かり易くするために貯金などの蓄えと光熱費、税金などは捨象します)、市内で消費している比率は50以下か、極端な場合70以下ではないでしょうか。中心市街地から人を集める力が失われ、和歌山県外で時間的距離が近い場所に大型商業施設が進出している中において、この傾向は更に上昇しているような気がします。

 このように域内で流通するお金が無くなっていることは資本のミイラ化を意味し、域内での経済活動が成り立たない状況の危機に晒されているような気がします。つまり企業にとっては生産活動に支障が生じ、事業活動が出来にくい状態にあるため、進出を見合わせることにつながります。
 そのため経済活動を成立させるためには、域内の消費でマイナスとなる分を外から稼いでくる、或いは産業を引っ張ってくる、創出する必要があります。

 この産業振興ビジョンは都道府県の70%近くが策定しているようですが、残念ながら和歌山県では策定していません。
 企業立地課の活躍ぶりは素晴らしいもので、発足以来既に約900社の企業を接触し企業誘致に取り組んでいます。そして企業立地の成果をあげていますし、今後進出が見込まれる企業もあると聞いています。
 そこに欠けているものは和歌山県が企業誘致をするのは全国に誇れる産業を創ろうとする産業振興のあるべき姿です。ひとつの課だけが懸命に取り組むだけではなく、企業誘致に関係する課員が横断的な活動が出来る体制を設けて欲しいものです。

 ところで企業はボランティアで進出してくれる筈もなく、採算ベースに乗らないことには和歌山県に来てくれません。その基になるのは企業用地の価格です。しかしながら平成17年度の和歌山県の土地鑑定価格に基づく企業用地価格は全国で14番目と、相対的に高い水準にあります。
 「和歌山県企業立地ガイド」によると、「西浜地区用地」の賃貸価格は月額204円/u、坪単価にして約673円。「雑賀崎地区用地」は月額184円/u、坪単価は約607円。「北勢田ハイテクパーク」は月額86円25銭/u、坪単価約284円となっています。
 これでは余程の産業ビジョンがあるか、10年相当分の固定資産税の補助など、飛び抜けた優遇措置があるかなどの施策がない限り進出は見込まれません。

 更に、この企業用地の問題について考えます。大規模な企業が進出するためには10万坪や20万坪では不足しますから、50万坪クラス以上の土地が必要となります。ここで企業用地の賃貸価格についてひとつの目安があります。
 大阪府下のある市では企業進出が進み、坪単価が300円に上昇したため進出を見合わせた例があると伺いました。
 瀬戸内海沿岸に位置するある市では坪単価は150円だそうです。しかし消費地が離れているため企業進出は見込まれていません。
 九州のある市では坪単価は30円から50円程度に抑えています。そのため企業進出が見込まれています。

 さて和歌山県の場合はどうでしょうか。複数の企業からの、和歌山市内の企業用地に限っての評価ですが、坪単価は70円以下というのが企業の評価です。これを超えると採算ベースに乗らないため、進出は難しいと判断されます。
 工場立地に当たっては企業用地の賃貸契約と初期投資額との関係が問題となります。
 コスモパーク加太を例に取り仮定すると、周辺部を含めて賃貸する土地は70万坪、投資額を200億円として10年で償却します。1年当たり20億円となりますから1坪当たり年、約2,800円となります。つまり一ヶ月の坪単価は230円となり、土地の賃貸料を仮に70円とすると坪単価300円ですから、安価で生産活動が図れることになります。
 地方都市にとって土地価格を低く抑えることが企業誘致活動の原則となります。「いくらで貸すのか」を提示することが必要なことです。

さらに外資系企業の誘致について。高付加製品を扱っている日本市場の魅力、そして日本製ブランド力の魅力を求めて、日本に工場立地を考えている企業もあります。港湾があり十分な用地を確保出来る和歌山県への進出も不可能ではありません。外資系企業からすると、大阪府も和歌山県も、地球規模からするとその距離は誤差の範囲だそうです。港湾があり関西空港にも近い和歌山県は適地になり得ると思いますが、外資系企業へのアプローチや国内外の企業に対する「企業誘致サーチャー制度」の活用も検討して欲しいところです。産学公の体制を取り、企業やNPOを含めた連携により、和歌山県に相応しい企業を誘致して欲しいところです。

 そこで質問です。
(1)産業振興ビジョンを策定して企業誘致から和歌山県の根幹になる産業誘致と育成を図る必要があると考えますが如何でしょうか。→知事

(2)和歌山県の企業用地は、鑑定価格制度を導入した後でも、全国的には相対的に高い水準にあるのは、どのような理由からですか。他府県と比較して競争力がないとも言える状態ですが、解決するための手段をどのように考えていますか。→知事
 企業関係者と懇談する中で感じることですが、企業が今まで立地したことがない県に進出するには相当の覚悟が必要で、絶対に後戻りできない覚悟で出向きます。決死の覚悟で県の扉を叩いているのに、何となく結論が出ない交渉になるとすれば、県の本気度が分からないと経営陣に報告し、その時点で進出計画は終了します。
 和歌山県に進出して欲しいとする熱意。一緒に地域の産業を創り上げる夢を抱えられる県であることが重要です。基幹産業となり得る企業に、ぜひ和歌山県に来て欲しいと言う強い決意を、知事の言葉で語って下さい。→知事

(3)何が問題で企業誘致が進展しないと考えていますか。また、企業立地活動をどのように考えていますか。→商工観光労働部長

(4)国土軸から離れている和歌山県に企業に来てもらうためには、企業用地の価格を和歌山県で採算ベースに乗った形で生産活動が出来る水準に下げる必要があります。
 価格は企業用地によって違いますが、例えばコスモパーク加太では先行事例と同等の価格でないと企業に来てもらうことは難しいと思います。
 地方自治体財政健全化法が成立し、地方自治体の決算が連結決算へと変化する中、コスモパーク加太の問題は放置出来ないものです。塩漬けにしておける状況ではないだけに早急に対策を打つ必要があります。
 県産業の根幹となり得る企業であれば、相当思い切ったインセンティブの導入や、公社保有地には県が関与した支援など、「コスモパーク加太対策検討委員会」の報告に基づいた優遇措置などの提供、或いは、企業に来てもらうために思い切って賃貸価格を抑え、その代わりに一定以上の雇用を条件とすることは出来ませんか。
 企画部長はこのコスモパーク加太に関して、今後の取り組み方針について、どう考えていますか。→企画部長
 
(5)企業誘致サーチャー制度については登録者数も数多く、成果も挙げているお聞きしますが、更に成果を生み出すためにも外資系企業への展開を図るためにも、原資総額はそのままで、成果を出した登録者への活動費を含めたインセンティブについて検討出来ませんか。→商工観光労働部長
 企業誘致に関しては、以上の点についてお答え下さい。


(2)観光医療立県和歌山の取り組みについて
  続いて観光医療立県和歌山の取り組みについての質問です。現在、全国で約240の地域で観光と何らかの健康に関するコンテンツを併せた取り組みがなされていますが、残念ながら殆どが上手く他地域と差別化出来ていないようです。そしてこの分野では和歌山県内の取り組みが2年から3年は他地域をリードして全国のトップを走っています。

 経緯を述べますと、平成16年度都市再生プロジェクトでの和歌浦地域を中心とした調査事業。平成16年度国土施策創発調査での「世界遺産を活用したこころの空間・癒しの交流づくりに関する」もの。地形療法を中心とした和歌山県の熊野健康村構想。
 平成18年度には、和歌山県立医科大学の「観光医学講座」開講や和歌山大学観光学科の開設、そして、経済産業省のサービス産業創出支援事業に採択された「観光医療立県和歌山」の成果により、一躍、和歌山県の観光医療産業が全国的に注目されています。
 整理をすると、和歌山県が中心となっている熊野健康村構想と、医療機関と民間のコンソーシアムで進めている県内周遊型の取り組みがある訳です。

 観光医療ツアーとは、楽しく観光をしながら、安心して代替医療のコンテンツ効果が期待でき、参加者に健康を認識してもらうことを目的とした取り組みです。そのため、健康障害に対して有効と思われる施設や観光資源を抽出し、代替医療を主とした観光の受け入れ体制を整え観光客に提供するものです。
 つまり今ある観光資源を活かし、観光産業としての付加価値を高め、他地域と差別化を図れるもの、それは高付加価値の観光施策としてニューツーリズムに数えられるものです。
 
 平成18年度の主な取り組みは、
市場形成のための健康保険組合や患者の会などへのヒアリングとデータベース化。
商品開発として、運動療法、温泉療法など和歌山県で可能な代替医療効果の調査と特定疾患患者さんへの対応ノウハウを基盤とした健康づくりや予防医療のプログラムコースの開発。
交通、宿泊、食事、物販などを連携させ、受け入れ施設の高度化と集客力の強化を図り事業性を想定。
お客さんと地域観光事業を結びつける役割を担う、日本初の観光医療指導士育成プログラムの構築。
ツアー参加者の属性などを管理するデータベースなどの開発。
 などを完了させています。

 その結果、観光と医療を融合させた次世代型の観光産業を開発し、顧客開拓、商品開発、サービス体制、人材育成を実施することで、和歌山県の観光医療サービス事業の仕組みが既に完成して来ています。

 この中で、和歌山県内の取り組みが他地域と差別化して評価されているのは、特定疾病対策、予防医療ツアー、美容目的ツアーを実践、検証し、本格的に取り組みを開始していることです。特に、特定疾病の患者さんのツアーとして、パーキンソン病、糖尿病の患者さん、人工肛門の患者さんなど、今まで観光をしたくても出来なかった方々にも和歌山県の観光を安全に、そして健康的に提供しています。
 この特定疾病の方々を対象としたツアーの実施は全国で初めてのことで、これを行なえる知識とノウハウがあるからこそ、健康関心層ツアーへの展開が図れ、それが他地域と決定的な差を生み出しています。それは、心身の健康バランスを向上させながら楽しめる観光プログラムを提供することにつながっています。

 現在は全国で初となる「観光医学講座」の開講。そして「観光医療指導師」「観光健康指導士」のふたつの資格認定講座を開講し、観光の安心と安全を支援するための人材育成を平成19年7月から開始させる計画があります。
 これは医学の専門家集団が、医療が産業につながる価値を見出し、和歌山県の観光産業と結びついたことが大きいと思います。他地域を明らかにリードしている観光医療産業は、観光医療立県和歌山の柱になる可能性を秘めています。 

 既に先の(平成19年)6月14日、つくば市で開催された第57回日本病院学会において、日本病院学会の藤原秀臣学会長は、その会長講演「医療の実践と社会の変革」の中で、和歌山県の取り組みを紹介してくれています。
 その内容は、これからは病院も観光と組むべきとした上で、和歌山県の先進性を紹介し高く評価してくれているのです。

 また観光医学の視点から地域医療を見直すことも可能です。地域医療とは住民の皆さんへの安心と安全を提供するものです。地域医療の体制が備わっていることで、和歌山県を訪れる観光客に対しても安心と安全を提供出来るのです。住民への医療サービスと、産業としての観光客への医療サービスを支えるためには、県立医科大学を中心とした医療ネットワークづくりが不可欠です。
 全国的にも観光地の過疎化か進んでいます。地域医療が崩壊すると地域の方の不安の高まりは勿論、観光客にも泊まってもらえない地域となり、和歌山県は安心、安全な観光地でなくなります。県立医大は、観光地の過疎化を食い止め、観光医療立県和歌山モデルを支えることが出来る唯一の医療機関です。
 視点を変えれば、和歌山県立医科大学が独立行政法人となったことは、正社員1,200人を超える大企業が和歌山県に誕生したことを意味します。医学はどんな産業にも付加価値を高めてくれるものですから、この大企業が持つ知的財産をもっと活用すべきです。今後主流となる、新しい観光の姿、健康・美容サービス産業を補強するのが 和歌山県立医科大学の新たな役割なのです。

 さて、和歌山県の地域資源活用型の観光医療サービス企画は、他地域に集客モデルを普及させるところまで至っています。京都や鹿児島などからも視察調査に訪れる予定がある他、和歌山県と並び観光、健康サービス産業が進んでいる他地域との間でも、ノウハウ連携の仕組みが図られようとしています。

 このように、本格的な取り組みが開始されようとしている中、単に調査事業や成功事例だけに終わらないで、観光産業のクラスター創成に拡がっている様子が伺えます。
 医学と医療、健康ウォークや水中エクササイズ、タラソテラピーや温泉療法などの健康分野。また美容分野では、東京の化粧品メーカーと共同研究も開始され始めました。
 地元の食材を活用した自然食料理の提供などホテル、旅館、飲食業の分野、健康サービスコンテンツを提供しながら周遊型観光の輸送の分野、全体を企画コーディネイトするサービス提供者など、お互いに補完しあう業種の連携が図れていることから、今後の新産業への発展が期待出来ます。
 平成19年6月1日にまとめられた「観光立国推進戦略会議の報告書」でも、地域固有の伝統、文化、歴史、産業、自然などの観光資源を活用するよう提言されていて、産業施設や素朴な家庭料理など、従来は観光の対象から外れていた身近なものが観光資源になるとしています。
 このように地元発で、新産業としての拡がりを見せており、他府県からの使節団も迎え入れている状況だけに、和歌山県もこの分野で施策を講じていただきたいところです。

 そこで質問いたします。
(1)経済産業省の事業採択を受け全国的に関心を集め、和歌山県での取り組みが始まっている観光医療立県和歌山としての健康サービス、美容サービスなどの産業化を図る取り組みについて。そして日本病院学会でも評価されている、和歌山県の新しい観光産業づくりに資する取り組みは、将来、観光医療立県和歌山の核となる可能性を感じます。知事の認識をお示し下さい。→知事

(2)本格的に和歌山県の新しい観光産業としてのクラスター創成まで発展しようとする状況において、和歌山県もブランディングなどの支援して欲しいところです。例えば「和歌山県と言えば、観光医療立県ですね」と思われる位のブランディングが必要だと思います。この事業化は正に民間の自助努力ですが、産業に発展させるためには県の関わりも重要です。今後の支援方策については如何ですか。→商工観光労働部長

(3)産業支援課の新施策である「観光産業プロジェクトマネージャー」は観光産業と他産業が連携した新たなサービス産業育成を支援する役割があるようですが、この活用について言及して下さい。→商工観光労働部長

 以上で第一問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
 以上

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平成19年6月 和歌山県議会一般質問について


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