平成16年 9月15日(水)
B.平成16年 9月
 和歌山市議会一般再質問内容
(1)南海電鉄貴志川線問題について

 株式会社が生き残りを賭けて企業再建に努力している中、ひとつも指標となるのが株価と企業の格付けです。格付け機関は年二回企業に調査書を送付し、経営状況を把握した上で、格付けし投資家に公表しています。格付けの変化は、当然に株価に跳ね返ります。
会社経営者は株主に対して経営責任を担っていますから、経営の健全を図るため不安要素を減少させ格付けを維持向上させることが使命です。信用調査は企業毎に細かい質問項目が設定されています。南海電鉄の場合「貴志川線はどうなっているのか」という具体的な質問に対応策まで回答する必要があります。この対応策がなければ指摘されますし、格付けにも影響してきます。
 南海電鉄にとって貴志川線は年間5億円の赤字ですから、一見影響はないように思われます。南海全体の経費は550億円、そのうち貴志川線の経費が7億円、全体の収入は50億円で、そのうち貴志川線は5億円の赤字ですから収入に占める赤字割合が大きく、会社を守るためには貴志川線が不安要素になっているのは事実です。

 鉄道事業本部では、鉄道事業者として鉄道事業を縮小することは耐えがたいものがあると、貴志川線廃線には反対していたのですが、株主や格付け会社からの経営改善勧告があり受け入れたのです。

 私が確認した情報を総合すると、残念ながら、南海電鉄としては貴志川線を継続する意思は全くないと言わざるを得ません。経営主体の形を変えて存続する枠組があったとしても、その中で資本を出資したり人を出したりすること、まして経営に参画する意思はありません。
 
 その裏づけを示します。それは8月6日の常務会で貴志川線廃線が決議された上で8月10日に記者発表を行い、株式会社の最高意思決定機関である取締役会でも9月8日に決議されていることから分かります。さらに経協において組合説明も終了しています。既に経営サイド、労使間での決定事項なのです。 
 これを覆すには、形の上では株主総会で廃線案を否決する手段がありますが、主な株主が銀行であることを鑑みると、現実的なものではありません。商法を勉強した方ならこの意味が理解できると思います。

 このような状況に追い込まれている中、サイコロは行政三者に預けられている形です。和歌山市と貴志川町が県の支援を受けながら市民を交えて存続案を検討し、経営主体を見つけることだけが存続への残された道です。

 南海電鉄からすると突然の撤退表明ではなく、行政三者に検討する猶予を与えた形での意思表示を昨年行っています。
 行政三者は利用促進案を検討するではなく、存続の可能性があるという形で市民に情報提供を行い、経営改善につながらない署名活動の形で市民を巻き込んでしまったような気がします。
 25万人の署名が集まっている訳ですから存続を希望している人が大半であることは分かりますが、署名提出以降の貴志川線利用客は更に減少している事実があります。

 南海電鉄は署名を受け取った際に、市民の意向として重く受け止めるとした上で、4月以降の利用客の動向を評価しながら、平成16年夏に改めて会社としての意思を表明したいと発言していました。
 つまり廃線を前提としながらも、25万人の署名の意思が本物かどうか動向確認をしていたのです。通常廃線の反対運動が起きると一時的でも乗客は増加します。しかし貴志川線に関しては乗客増加の結果は表われませんでした。


 市民である私達は、25万人もの署名を集め市長から南海電鉄社長に手交している報道を受け、南海電鉄は市民の意思をそれだけで理解してくれると錯誤したのです。南海電鉄の本意が私達に伝わらなかったことが、見えた形、つまり乗車などの形で市民の動きにつながらなかった要因のひとつに挙げられます。
 
 今後、行政三者が地方鉄道を必要と考えるなら、同じ轍を踏まないためにも行政三者が市民の意向を受け、存続を望むのであればスタンスをはっきりさせた上で、市民参画を得られるようなしくみを作り上げる必要があります。
その結果を持って直ぐに、県に対して和歌山市と貴志川町として共同で存続の意思表示を行い、協力依頼を求めるべきです。結論を先送りにしていては存続を望んでも、無理にという結論に向かいます。


 重要な点なので繰り返しますが、県では、当該の行政が本当に貴志川線の存続を望んでいるのかよく分からないようです。代替手段として、バス運行も視野に入れているだとか第三セクターでの存続は望まないなどの発言があることから、支援を行うに際して不安感があるようです。
県が支援すると言えば、存続に向けて新たな展開を見せることになります。県が意志を固める際、当該行政の態度があいまいであれば確実に支援の決断が見送られます。
 和歌山市と貴志川町が存続の意思を示すことから、事態はそれに向かって動き出します。
 
 私も幾つかの話し合いの中で勘違いしていたのですが、既に南海電鉄による存続か廃線かの問題ではないのです。
 廃線か南海電鉄以外の経営主体での存続かの決断が必要な時期なのです。
 その状況認識をした上で、市長から答弁をお願いいたします。

1.再度お伺いいたします。市長は和歌山市に貴志川線を本当に必要と考えているのでしょうか。市長の意思をお示し下さい。

2.必要であると考えているのであれば、市民の盛り上がりを前提とした上で、存続に向けた取り組みを行政三者で行わないと誰も主体とはなってくれません。行政と市民が主体となることを明確にした上で存続案を策定し、県に対して早急に支援を求めて欲しいのですが、その点についてお答え下さい。
 
3.県に支援を求める内容は、南海電鉄から鉄道資産を譲り受ける条件整備と、経営主体と運営方法についてです。具体的には、ストックを県または行政三者により共有して保有することです。その上で、経営主体を行政三者が担うのか、民間の経営主体を引っ張ってくるかの選択肢があるだけです。
 しかしながら貴志川線の収支については、南海電鉄から提示された鉄道事業法に基づく収支表があるだけです。民間企業と経営をしていただく交渉をするとしても、これでは交渉のテーブルにすら着くことは出来ません。
 南海電鉄に対して、貴志川線を経営する立場の視点を持って必要な情報提供を求めて下さい。現状のコスト構造を精査した上で、大鉈を振るって事業収支を改善させ、それでも赤字が発生するのであれば負担可能な範囲に納められるのか、というフロー面での検討が先決です。
 このような経営に関する必要な情報が何なのか分からなければアドバイザーをつける必要がありますが、この点についてお答え下さい。
 
4.アンケート調査などを委託して作成した貴志川線調査報告書による結論と、今後の取り組みはどの様なものですか、お示し下さい。




(2)SOHO事業について

 次にSOHO事業についてです。東京に、地域振興整備公団が運営するMINATOインキュベーションセンター(MIC)が平成16年4月にオープンしました。
 ここでは、起業志望者を支援する施設とソフトを持っています。機能の核心部分は建物よりも充実した支援体制にあります。賃料は周辺の事務所と同程度ですから決して安くありませんが、それでもサポートを希望して起業を考えている人達が集まってきます。
 起業希望者は最初、プレインキュベーションルームに入ります。事業家の卵の状態からスタートし、ここでアイデアの事業化に向けた活動を開始します。ここの入居者は入居が決まってから6ヶ月毎に利用開始時に定めた目標が前進しているのか確認を行い、未達成であれば事業見直しを行い、事業計画が適正なのかサポートが必要かを判定します。駄目と判定されたら退去となりますから厳しいものです。
 プレ期間を経た後で有望なところはメインインキュベーションに入居できます。ここでも1年毎に事業計画を判定されます。
 
 起業で成功するにはアイデアを商品化するスピードが第一です。スピードがなければどんなに良いアイデアでも世にでません。目途は2年、それで起業の可能性がないなら、それ以上そのアイデアに取り組んでも駄目です。それは個人や技術、知識を否定するものではなく、アイデアが駄目だったと評価するものですから、次のアイデアを引っ提げて何度でも挑戦したら良いのです。
 
 さてここではインキュベーションマネジャーが常駐し、入居者をサポートする体制を確立しています。インキュベーションマネジャーは、創業期における注意点を指摘し、対応策のアドバイスを行う役割を担っています。創業間もない企業と体制が確立した企業に対するコンサルティング内容は全く異なります。
 確立した企業が更に大きくなるためには、法人化や社員雇用、ISO取得などの知識が必要ですが、創業間もない企業、つまりSOHOに入居している企業が求めているアドバイスは、営業支援と販売支援の二点です。収益構造を確立することが大切で、いきなり億単位の収益をあげたいとは思っていない点に注目して下さい。
 MINATOインキュベーションセンターではその支援方法として、新商品開発のコンセプトづくりやテスト販売までサポートしてくれる他、名刺やロゴ、パンフレットなどの営業ツールの作成についての支援も行っています。
 管理者としてSOHO入居者に対して行うべきは、常駐でアドバイスが受けられる体制をとっておこと、アドバイスするのはベンチャー企業家を育成するための専門家である必要があります。

 和歌山市のSOHOでアドバイスをいただいている所は大手で社会的に信用できる会社ですか、その会社のクライアントの多くは大手企業で、ベンチャー企業が求めているアドバイスを提供できないと思います。
 加えて入居者にアドバイスをする者は、部屋で相談に来るのを待っているのではなく、各ブースに土足で上がりこみ経営者に対して目標の達成状況や営業成績などを聞き取り、その場でアドバイスを行えるフットワークの軽さと知識が必要です。アドバイスを行う役割を担う者にブース提供は不要です。

 そこで質問です。
 全国で機能しているSOHOでは、インキュベーションマネジャーを配置して入居者の相談を受け付け解決に導いています。MINATOインキュベーションセンター、京都市にあるリサーチパーク、大阪市の大阪産業創生館などがそうで、全国からの評価を受けています。

和歌山市のSOHOでも、目的である企業家を育成しテイクオフさせるためには配置の必要があります。少なくても大手の監査法人ではないと思います。
 そこで質問です。発足当初から相談役として配置している監査法人は適切なアドバイスが出来ているかどうか入居者の意見を把握していますか。例えば相談件数を把握しているなら示して下さい。また各ブースを廻って育成するための支援活動が行えていると評価していますか。お答え下さい。出来ていないのであれば、SOHOの目的に相応しいインキュベーションマネジャーを配置し育成体制と販売支援体制の確立に努めるべきだと考えますが、お考えをお示し下さい。

 次にSOHOビレッジのあり方について考えてみます。
 三箇所のSOHOビレッジは、同じ機能を持たせている点に問題があります。つまり空きブースが出ると公募を行い埋めていく方法を取っています。これだと単にブースを埋めているだけです。
 そこでSOHOビレッジを機能別に整理し、成果を図るしくみを提案いたします。
 そのしくみはこうです。ひとつのSOHOビレッジをプレブースとします。アイデアを持ち事業化を図りたいベンチャー希望者は、まずここに入居してもらいます。個別の部屋である必要はなく、しきりだけで区切っても良いので多くの希望者に門戸を開きます。この建物にインキュベーションマネジャーを配置し、事業立ち上げの支援とアドバイスを行ってもらいます。
 プレ期間は一年です。一年後にインキュベーションマネジャーが目標設定に対する達成度を図り事業見直しを図ります。ここで可能性があれば入居期間を6ヶ月延長、当初のやる気がなくなっていたり、アイデアが駄目だったら退室していただきます。

 二つ目は、メインブースとして活用します。プレブースで1年経過し事業見込みのある入居者はここのブースに移動します。ここのブースは一つの部屋を全て活用してもらいます。
 起業家から事業家への移行期となります。成功のための目安は2年のため、入居期限を2年とします。

 三つ目は、メインブースで事業化に成功し規模を大きくし上場を目指す企業に入っていただきます。従業員が増えるのでテナント貸しとし、事務所として活用できるものにします。都会であれば成功したところで退去してもらうのが原則ですが、和歌山市の特性を勘案すると、成功した会社の仕事の中心は東京、大阪となり、和歌山市から本社を移される可能性があるため、期限を設けずにこの建物を引き続き利用できるものとします。

 このようにステップアップさせるしくみをつくることで、入居したら終わりなどと安閑としていられない状態を作れます。ベンチャー希望者の裾野を広げ、初期の頃はインキュベーションマネジャーが支援することが出来ます。アイデアが駄目なら退室していただき、自立するにつれて大きなブースに移り、さらに会社を大きくすることが出来ます。
 ステップアップするしくみを取り入れることを提案いたしますが、市長の見解をお聞かせ下さい。

 一例として、和歌山大学の学生が立ち上げたベンチャー企業の「トリプルエー・コミュニケーションズ」があります。Yahooなどに続いて日本で第三位の検索エンジンを持つ会社です。和歌山市発の学生ベンチャーでSOHOビレッジを退室してからも成長を続けていました。しかし9月5日、プロ野球近鉄球団を買収する意向を示し話題になっている「ライブドア」に買収されました。
 和歌山市で生まれ育った会社ですから、大きく成長するまで見届けたかったのですが残念です。もう少しSOHOのサポート体制が充実していたらとも思います。

 今のまま放置すれば全国レベルから取り残され、和歌山市はSOHO事業から撤退を余儀なくされますから、やる気と能力のある若い事業者は和歌山市から出て行くことにつながり点も指摘しておきます。

 さて、和歌山市からSOHO入居者に対する委託はしているとお答えいただきましたが、能力のある入居者を育成するには、インキュベーションマネジャー配置による適切に指導と助言に加えて経済的なものが必要です。和歌山市が企画コンペする業務に対して、SOHO入居者は入札に参加してもらうため情報を付与すべきです。市の仕事に参画する機会を付与することは実践の場であり、ベンチャー企業の能力は向上します。
 企画力やアイデア勝負、IT関係の仕事は、SOHO入居者でも大手と十分勝負できます。
実際、行政のコンペで入札した会社の仕事は下請けに回されますが、子や孫受けでSOHO入居者に仕事は回っている事例があります。入札金額と孫受けの金額は相当の開きがあります。これをSOHO入居者が行政から直接仕事を受けることになると、当該業務に関する市の予算は大幅に減少することにつながります。
 全ては市のコンペに関する情報が不足していることが原因ですから、この参画障害を取り除くべきです。
 和歌山市がSOHOに入居を認めている会社は、市が審査の結果、信用できると判断したものだと思います。それなら市のコンペに関して、正当な競争機会を付与すべきだと考えます。市の発注業務でSOHO入居者が受注できる業務情報はどのようになっていますか。  
産業部長の答弁をお願いします。
 以上をもって第二問を終わります。
 以上

 4.再質問への答弁内容へ


平成16年 9月 和歌山市議会一般質問について


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