平成16年 3月 8日(月)
@.平成16年 3月
 和歌山市議会一般質問内容
(1)南海貴志川線廃線について

 おはようございます。週明け一番の質問に入らせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 先ごろ、芥川賞の発表がありました。受賞したのは、「金原ひとみ」さんと「綿矢りさ」さんの二人です。受賞作品は「蛇にピアス」と「蹴りたい背中」です。最年少受賞ということで話題になりましたが、それよりも凄いのは作品の中身です。
 文学作品の値打ちは人それぞれが感じるものですが、とにかく描写がリアルで、読みながら情景が浮かんでくる文書力は凄いの一言で、19歳、20歳の方が書いたとは思えない程です。社会状況が文学に影響を与えるのか、優れた文学作品が社会に影響を与えているのかは分かりませんが、とにかく、これらの作品には今の社会情勢が良く反映されています。
 少し理解しがたい部分もあるのですが、それは読み手が、知らないうちに社会からずれてきていると言う警告なのかも知れません。何しろ、芥川賞をとる程、文壇から評価されている作品ですから。

 私が10代の頃の芥川賞を受賞した作品に、「限りなく透明に近いブルー」や「エーゲ海に捧ぐ」がありました。当時、受賞に値するか否か議論されていた記憶があります。文学とは言えないだとか、何を伝えたいのか分からないと、当時の主流派と思われる所から批判がありました。
 ところが高校生だった私たちは、自然に新しいその作風を評価し、今までと違った作家の登場を歓迎したのです。新しい時代を切り裂くほどインパクトのある作品の登場は、それまでの作品を追いやりました。それ以降、私たちは新しい作品に傾注していったのです。

 それまでの通説と言われるものが固まってしまうと、時代は新しいスタイルのものを登場させます。当時感じたものが、今再び感じられます。彼女たちがこの先どうなるか分かりませんが、文壇に新しい風を送り込んだのは確かです。
 ただ違うのは私の感じ方で、当時は新しい作品を歓迎して受け入れたのですが、今は歓迎しつつも理解に苦しむ所があることです。今の社会と、感覚のズレを生じさせないように心掛けておきたいと思います。
 さて、議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問を行います。
 

 一点目は、南海貴志川線の廃線問題についてです。
 平成15年10月、南海電鉄は貴志川線の廃線を検討していることを、初めて明らかにしました。和歌山市は直ちに「南海貴志川線対策協議会」を立ち上げ、存続を要望しながら、利用促進を呼びかけていく活動を展開しています。
 南海電鉄には、公共輸送を担う公益事業者としての責任を求めることは当然ですが、民間企業としての採算性を無視することは出来ないところに、この問題の難しさがあります。
 生活の場に電車があれば便利だけれど、利用をしないでは、存続させることは困難となります。対策協議会は、存続のために利用促進案を立案し、乗客を増加させる取り組みを運動の柱にさせた上で、南海電鉄に一層の経営努力を求めることが役割であると認識すべきだと思います。
 和歌山市が存続に向けた取り組みに全力を注いでいることは十分に理解しますが、対応が遅いことが気になります。

 現在、和歌山市が事務局を努めている対策協議会で講じられている対策は、存続の署名活動と、実態調査としての「南海貴志川線利用者アンケート調査調査票」を、2月12日と2月27日に利用者に配布し、回収しているだけです。

 現在社会では、ビジネスでもまちづくりにおいても、成功するために必要な要素は、スピードと企画力であることは疑う余地はありません。
 貴志川線の廃線検討が明らかになってから、早や四ヶ月が経過しています。しかも、南海電鉄が廃線を表明したのは、監査役からの指摘があったと聞いています。株主の利益を守るために監査役から指摘があったという事実から理解すべきは、余裕を持って検討している時間がないと言うことです。
 つまり、決算状況によっては、廃線表明の可能性があると言うことです。廃線を表明されると、一年後には貴志川線がなくなっている可能性があります。つまり、改正鉄道事業法第28条の2一項によると、「廃止の日の一年前までに、その旨を国土交通大臣に届けなければならない」と規定されているだけで、従来の許可制と異なり、廃線が簡略化されています。

 平成15年度通年の決算では約4億円の経常利益が出ると予想されていますから、4月での廃線表明はないと思いますが、平成16年9月中間決算次第では10月に廃線表明の可能性はあると思います。
 それまでに、現状改善案と行政が公共交通にどう関わるかを十分に検討し、南海電鉄と協議しなくてはなりません。まだ利用状況を調査しているのでは、スタートから立ち遅れていると言わざるを得ません。
 一方、対策協議会の予算は700万円であり、その活動の内訳は、利用状況調査、利用実態と現状課題の調査、新たな運営形態の検討調査の3項目で、全ての予算を使い切ることになります。つまり、現状把握と代替輸送の提案を受けるだけの事業で終わりとなります。
 
 南海電鉄貴志川線の現状についてです。 経常損益が平成14年度で5億円あります。 営業係数は244です。これは100円利益をあげるために244円の経費がかかることを示しています。これ以上は貴志川線単体のバランスシートがないため、良く分かりません。
 南海電鉄は、有利子負債の削減を目的に、平成14年度を初年度とする新三ヵ年計画として「創生120計画」を実行しています。平成16年度の最終年度には、有利子負債残高を5,800億円に圧縮し、連結当期利益50億円を目指す計画です。
 平成14年度決算でも明らかなように、南海電鉄は単体でも黒字基調の会社で、赤字の会社ではありません。年間約200万人が利用し、地域の重要な輸送機関として使命を果たしている貴志川線の廃線表明は、利用者の利便を考慮しない、公共性、公益性を放棄したかのような態度に写ります。
 

 そこで質問です。
1.南海電鉄が意思決定するまでの時間は少ないと思われる中、対策協議会は4月末のアンケート調査結果から、どのようなアクションを起こそうと考えていますか。

2.現状では、これからの対策協議会の活動方針が見えません。対策協議会に予算が無い中、平成16年度上期の対策協議会活動の骨子をお示しください。

3.南海電鉄の収支状況がどこまでいけば、廃止を撤回するのか明らかにさせた上で対策協議会の活動を行っていますか。それを明らかにすることが、対策を検討する上で最も重要なポイントです。
 対策協議会が知るべき最低限必要な数値は、
(1)直接経費がまかなえたら良いのか。(2)貴志川線単独で収支がつぐなえる必要があると考えているのか。(3)輸送密度は何人ですか。(4)輸送密度は何人必要と考えているのか。(5)一日の乗降客は何人必要なのか。(6)貴志川線単体の収支を見ると減価償却費が高額です。設備は老朽化している筈ですが、減価償却費の内訳を示して下さい。(7)退職金が毎年多く支出されていますが、最近5年間の退職者数を示して下さい。(8)規模からすると、やや高額と思われる経費6,000万円、および営業外費用4,000万円の内訳を示して下さい。
 以上、明らかになっている数値を示して下さい。



(2)行財政改革について

 次に行財政改革についてです。
 地域経済の低迷や固定資産税の評価替えに伴う地方税の減少、 三位一体論による地方交付税の減少、退職手当や公債費、扶助費の義務的経費の増加により、財政は危機的局面に入っています。

 10年後のまちの姿と市役所が果たす役割を見据えて、市役所の経営改革と再構築に取り組むことが大切です。目先の財政危機だけを打ち上げ、歳出削減だけに振り回されるだけでは、過去と何も変わりません。中長期的な財政見通しを持ち、進むべき政策を打ち出さないと展望は開 けません。当面は3年程度の財政危機対策の戦略をつくり、実行する姿勢が必要です。
 政府の三位一体地方財政改革は、平成18年度までに4兆円の国庫補助負担金の削減、そのうち義務的経費は全額、それ以外は80%を税源移譲で賄うこととなっています。このことで、全国では44都道府県で2兆6,160億円の財政不足が生じています。
 和歌山市も同様で、公立保育所運営費を初めとする補助金が廃止されるなど、歳入は6億4,500万円減少しています。今後2年間も同程度で予算編成をする必要に迫られています。

 ただでさえ、財政危機が言われている和歌山市で、歳入不足は深刻で、既に単年度で考えるべき問題ではないのです。平成19年度以降の税源移譲は、今のところ所得税か消費税になるのかは不明ですが、平成18年度までの政府からの税源移譲分は判明しています。
 これに加えて、市税や事業所税、固定資産税なども見込んだ歳入規模を策定している筈です。今後の収支不足を見込むために、多くの地方自治体は三位一体論を反映させた収支状況の見込み作業に入っています。
 この見通しを作成しておかないと、今年秋、次年度の国庫負担金と税源移譲の方針が出された時、即座に対応出来ないからです。

 横浜市では平成14年9月に、中期政策と中期財政見通しを公表し、将来の市政に責任を持つことを市民に示し、意見を求めています。向こう5年間、つまり平成18年度までの収支不足額累計を算定し公表しています。
 平成15年1月には、中期財政ビジョンを公表しています。これは先の中期財政見通しと共に、特別会計と企業会計の市債のうち、市が税金で負担しなくてはならない債務や外郭団体の債務のうち、借り入れ原因などから市債務として考慮すべきものの総額と財政の実態と検討すべき課題を公表しています。三位一体論により見直しは必至ですが、収支不足を確定させた上で市民に公表しているので、今後削減があった場合にも対応が容易となり、情報開示しているため、市民の同意は得やすくなります。
 向こう2年間の政府移譲金の見通しは立っていませんが、現行の条件で平成18年度までの中期的な財政計画は立てられます。平成18年度までの、一般会計と特別会計の収支不足額を示して公表し、政府移譲金の見通しが立った時点で、市民に説明して欲しいと思います。三位一体論は、市民にはとても分かりにくい改革です。

 昨年9月議会一般質問で提案したIR活動については、検討すると答弁をいただいていますが、三位一体改革を含めた平成16年度の予算案を、どう市民に説明しようとしているのですか。
また所信表明では、先の財源は先行き不透明と述べていますが、不透明だから収支不足額が算定できないではなく、余計にIR活動を活用して情報公開に努めるべきだと思いますが、考え方を聞かせて下さい。
 
 さて、財政再建団体についての問題です。
 和歌山市にとって最大の問題は、財政再建団体になることを避けることです。財政再建団体とは、自力で赤字の解消ができなくなり、国に管理されながら財政再建を進める団体のことです。このため財政再建団体になると、市税の引き上げや、福祉などの行政サービスの低下、起債が制限され公共事業が抑制されるなど、私たちの生活に影響が出てきます。
 財政再建団体に転落する条件は、標準財政規模の20%を越える負債を抱えることです。和歌山市の標準財政規模は、平成14年度決算ベースで770億円のため、目安として赤字が154億円になると財政再建団体になります。平成14年では一般会計の収支は11億円の黒字ですから、一見すると問題はありません。

 さて答弁で、収支不足額を示していただけたら分かることですが、一般会計では毎年黒字決算となっていますから、財政再建団体とは縁遠いものに感じます。市長が財政問題を訴え、和歌山市が財政再建団体に陥る危機だと言っても、過去のトレンドと、単年度の財政赤字の問題だけの説明に終始しているため、市民の皆さんにとっては現実的な話に聞こえません。
 一般会計と特別会計を合わせた収支不足を示していただき、和歌山市が財政再建団体になる可能性はあると考えているのでしょうか、はっきりと聞かせて下さい。
 仮に財政再建団体になった場合、私達市民への影響はどの程度なのでしょうか。併せてお答え下さい。

 続いて歳出面の課題です。
 歳出面では見えない負債の問題があります。
 ひとつは団塊の世代の退職金問題です。退職金の増加は人件費比率を高め、経常収支比率を引き上げます。
 この隠れた負債を市民に分かる形にしておくには、必要な積立額を明示するか、積み立てが出来ない場合は、積み立て不足として毎年度の決算報告の中で公開するしくみが必要だと思います。そうすれば退職金総額が分かり、財政状況はそれを見込んで改善される筈です。

 平成15年度の退職予定者数は113人で、退職金は約30億円です。平成17年度から団塊の世代の退職がピークに達する平成19年度までの退職予定者数と、退職金総額を示して下さい。

 また退職金に加えて、土地造成事業の地方債償還期限も同時期に訪れます。平成17年度で91億円、平成18年度で18億円、平成19年度で50億円です。販売の見込みが立たない状況の下、借り換えの目処は立っているのでしょうか、お答え下さい。

 以上

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