平成15年 9月16日(火)
@.平成15年9月
 和歌山市議会一般質問内容
     【 質問内容一覧 】
        (1)職員の能力向上方策について
        (2)時代が求める行政の役割について
        (3)情報公開とIR活動について
        (4)東南海・南海地震について


 和歌山市の職員さんと接する機会を持たせていただいています。そこで、感じることは、仕事をよく知っており、熱意も使命感も併せ持っていると言うことです。これは和歌山市にとって大変大きな財産です。
 先日来、他の地方自治体の方、議員と意見交換する機会が何度かありました。話題として、職員さんの資質についての話が必ず出されます。多くの市町村では、職員さんの仕事遂行レベル、市民への接客態度、仕事への意欲などの面から、かなりの不満を感じているようです。確かに、和歌山市でも接客態度などの不満の声は聞くこともありますが、仕事遂行の能力は十分評価できると思います。

 市長就任以来、市役所改革を目指して「市民は税金をいただいているお得意先であると認識を持って市民と接する市政を心がけること」を訴えてきました。見える形としても、市民に分かりやすい組織改正を行い、市民サービス向上のための取り組みを行ってきたこと、などから職員さんも、気配りの市政、開かれた市政に意識が向いてきていると思います。

 さて、今までの行政の仕事からすると、現状の能力さえあれば、今後も市役所を支えていけると思います。しかし、時代が市役所に対して求めるものが変わっています。
 これまで行政の仕事は、市民へのサービスなどを公平、公正に実施することが第一義であるため、一般的、抽象的にする必要がありました。従って、職員さんは、規則の範囲内で仕事をしておけば良いわけで、規則を覚え、正しく当てはめて処理する能力が求められたと思います。
 しかし現在は、魅力ある政策、効率的なお金の使い方などが求められています。つまり、政策立案、多様化する個別案件への対応と処理、市民への責任ある説明など、職員さんには、個別、具体的に仕事を判断、処理する能力が求められているのです。
 そこで提案です。
 ひとつは、職員さんの民間企業などへの派遣です。
 和歌山県庁では、職員さんの能力向上のため、民間企業や他の自治体へ派遣、また、短期間、民間企業での研修も行っています。
 具体的には、民間企業へは、JR西日本、リクルート、イトーヨーカー堂にそれぞれ派遣しています。他の自治体では、岐阜県、三重県、大阪府、奈良県、鳥取県などに派遣しています。
 和歌山市では、過去に電通への職員派遣がありました。現在は、島精機に1名、神戸市に1名を派遣しています。

 先日、JR西日本で研修を受けた県の職員さんの話を聞きました。「県にいれば、接客する機会が少なく、マナーや応対態度など、どう評価されているのか気づかなかったけれども、改札でお客さまと応対すると、自分の対応に応じた反応、態度が返されるため、とても勉強になった。」あるいは、「県民のみなさんをお客さまとして意識するようになった。この気持ちを忘れないようにしたい。」と話してくれました。どんなに優秀でも同じ文化の中でいると、考え方や価値観がどうしても同質化してしまいます。善し悪しは別にして異文化の中に身をおくことで、幅広い考え方を身につけ、感性を磨くことができます。

 公務員に対しても、民間のスペシャリストと同様の能力が求められている時代です。
 例えば、観光課の方を旅行関係会社に派遣する、広報の方を広告会社に派遣する、市民課の方をサービス業に派遣するなど、スペシャリストを目指しての派遣が必要と思います。何でも薄く広く精通している人の需要は社会的に少なくなってきています。民間の厳しさと、スペシャリストとしての能力を備えたプロの行政パーソンを育てて欲しいと思います。
 職員さんを民間企業に派遣することは、短期的にはその職場に負担を強いることになります。しかし、長期的視点に立てば、一年間程度派遣し、民間感覚を身に着けて帰ってもらうことの価値は大きなものがあります。

 今後の市政運営には、経営感覚と交渉能力が求められると思われます。公務だけでは身につかないこれらの感覚を習得するためにも、さらに職員さんの民間企業への派遣を行えないものか、当局の考えをお聞かせ下さい。

 次に、インターンシップの取り組みです。
 和歌山市では既に、昨年度からインターンシップとして学生を職場に受け入れています。本年度は8名の受け入れがあります。学生から見たインターンシップのメリットについては今回割愛し、市役所にとっての利点を述べます。
 まず、異質を受け入れることにより組織文化の見直しが図れます。私達は、同質の中でいると、いつしか同じ価値観を持った集合体となります。良い意味では伝統、悪く言えば硬直化、変化を嫌うということです。組織を活性化させるためには、常に異質を受け入れなければなりません。新人を迎え入れたり、人事異動を行うことは、同文化の中に異質を入れることに他なりません。 
 インターンシップは、市役所に社会経験の無い学生を受け入れることによる文化の融合が図れます。学生に仕事を教えるには、根拠を示す必要があり、規定を開くことも必要です。教えることで、仕事のステップの再確認にもなります。組織へ積極的に異質を受け入れることは、意識改革にもつながります。

 近畿経済産業局もインターンシップに力を注いでいます。ここともタイアップしてインターンシップ制度の拡大を図って欲しいと思います。

 次に、市のビジョン策定、計画策定などのシンクタンク的業務を、職員さんによる政策研究グループでの取り組みを提言いたします。
 既に市には、政策研究グループ制度があります。職員さん達が研究したいテーマを当該部に提出し認められたら、10万円の調査費がつたい上、課題にチャレンジできる制度です。毎年、自主的に2〜3件の取り組みがあります。結果は、報告書にまとめられ、市長以下幹部職員に報告されています。
 この効果は、職員さんにより市の課題が発見できること、個々の能力向上につながること、市長を始めとする幹部職員に対して成果を報告できることなどがあります。

 この制度を更に進展させることで効果的な取り組みとなります。
 例えば、市が委託しようとする調査の主体をこのグループにします。委託するシンクタンクはグループに対して、アドバイスと補助する役割に徹してもらいます。
 このことで、職員さんの能力向上が図れ、ノウハウを身につけることが出来ます。これを経験した職員さんが自己研鑽を重ねることで、やがて市の課題に対して自分達で挑戦し、まとめ上げることが出来ると思います。
 また、職員さんだけで研究するのではなく、取り上げた課題に対して専門の大学教授にチームに加わってもらい、ゼミナール形式で研究できるしくみを作って欲しいと思います。大学の先生が加わることで、飛躍的に研究成果とチーム力が高まります。

 関連して、今回、和歌山市のイメージを高めるための政策提言を委託しようとしていますが、職員さんはその事業に関わる予定はあれますか。シンクタンクによる和歌山市活性化のレポートは、過去幾度となく報告されています。ですから、身のあるものに仕上げるために、実際に行政を運営している職員さんのプロの目が必要と思いますし、更に、若手が研究調査に関わることで、職員さんの能力向上が図れると思いますので、この調査チームに是非、職員さんを、加えて欲しいと思います。

 以上、職員さんの民間企業への派遣制度、インターンシップの取り組み、政策研究グループの有効活用について、当局の見解をお聞かせ下さい。



(2)時代が求める行政の役割について

 一般的には、立法作用と司法作用を控除したものすべてが行政と言われています。そのため守備が広範囲で、内容を特定しにくいのです。特に最近、自治体には、福祉、教育、文化、産業の振興、環境保護、インフラ整備など、ありとあらゆるもの求められています。

 市長の所信などを拝見させていただきますと、おぼろげながら考え方は見えてきます。
 例えば、地方も従来の発想を転換し、その行政システムを持続可能なものに変えていくことが重要と考えていること、そのために市民の声を的確に反映しながら、知恵をしぼり、創意工夫して地域の個性を発揮していくことが必要としていることです。
 このように、これまで市民が求めてきた行政のあり方と、今後必要とされる行政の姿は異なると思います。この基本認識を市長と職員さん、そして議会が同じくしておかないと、政策検討面でズレが生じる可能性も出てきます。
 市長が考えるこれからの行政のあり方についてお聞かせいただきたいと思います。



 現在、政令市を中心にIR活動、IR説明会を開催している自治体が多く見受けられます。
 これは、安全性に敏感な市場から、資金調達する地方自治体が、投資家と信頼関係を築くには、財政の健全化や情報開示、分かりやすい説明力などが求められている時代となっているからです。地方自治体の中には、銀行から取引を降りたいと言われているところも出てきています。借金がかさむ自治体の財政力に市場が疑問符を付け出しているのが現実です。
 今後、市民と議会への情報公開に加えて、将来に備えて、投資家にも見える形で現在と将来の財政状況を公開する姿勢、つまりIR活動が必要と考えます。
 行政に対して、市民の目は厳しいものがあります。財政が厳しいことを訴えるだけでは、理解をいただけません。

 この程、日経BP社が調査した自治体情報化の進展度を比較する「e都市ランキング2003」が発表されました。和歌山市は、201位となっています。和歌山市でもバランスシートを含めた財務諸表や財政健全化計画をホームページで公開するなど情報公開が進んでいると思いますが、世間で情報公開が進んでいると評判の三鷹市、金沢市、静岡市などはやはり上位にランクされています。
 和歌山市の評価は悪くないと思いますが、更に先進モデルに近づきたいと思います。
 その取り組みのひとつとして、7月に市のホームページをリニューアルし、見易くしています。特に、市民が請願する場合のしくみ、流れの記述は分かり易くなっています。市長が市民の意見を取り上げるために、いかに請願の扱いを重視しているか伺えます。

 そこで市長にお尋ねいたします。情報公開に対する姿勢と自治体がIR活動に取り組むことに対する見解をお聞かせ下さい。



(4)東南海・南海地震について

 東南海・南海地震についてお伺いいたします。
 中央防災会議によると、南海地震発生の想定はM8.4、和歌山市は震度6弱、津波の高さは3.3m、到達までの時間は約58分となっています。
 東南海・南海地震同時発生の被害想定ではM8.6にもなります。この場合の被害は、甚大、広域、複合災害などで表現されていますが、被害を想定するのは難しいと思われます。
 さて、昭和53年から対策が講じられている東海地震については、現在に至るまで、政府は総額約1兆5,000億円の耐震対策を行っています。26年かけて着々と対応策を講じているのです。
 今年7月15日、東南海・南海地震対策特別措置法が施行され、ある程度、金銭的な裏付けが出来ると思います。
 東南海・南海地震の考え方として、起こってからどう対応するのかではなく、起こる前に何をしておくかが大切です。さらにリーダーは、今どうするのかだけではなく、将来の都市計画を年頭に入れた対策を検討すべきです。
 つまり今回予想されている地震の後、100年〜150年先にも再度、東南海・南海地震が来ると推定されているため、それをも含めた地震対策として、災害に強いまちづくりを考えておく必要があるのです。そのためには、相当覚悟を決めた地域計画が必要となります。

 和歌山県では150年前の安政南海地震の時、濱口梧陵が私財を投げ打って広川町に津波対策として堤防を築いています。このことは、稲むらの火として有名な逸話となっていますが、今回の対応如何によっては、後世に残る事件となる程の大きな課題だと言えます。

 まずこの地震発生の時期です。先日、京都大学防災研究所巨大災害研究センター長の河田恵昭教授のお話を伺いました。
 それによると、到来の時期の予測は、2035年が最も確率が高くなっています。対策を練れる時間は30年です。
 ただ、東海地震との兼ね合いが問題となります。東海地震発生の予測は2005年迄とされています。そして、覚悟すべきは、東海地震が来た後は、東南海・南海地震がいつ襲ってきても不思議ではないということです。
 それを勘案すると、今すぐの対応策が必要です。対応策やアクションプランの重要性の認識が必要です。

 通常、経験則を基に対策を練るべきなのですが、今回予想されている地震は、過去の経験がオールマイティに役立たないそうです。今回は、前回の同地震の8.0Mと比較してエネルギーは4倍、津波の高さは1.7倍あるからです。過去の対策、今までの防災対策では対応できないと思っておいたほうが良いのです。
 簡単に言えば、1981年の新しい耐震基準に基づいて建てられた家屋以外(それ以前のもの)は、ほとんど倒壊すると思うべきです。

 串本沖での津波発生のシミュレーションを見せていただきました。津波発生から10分後に串本町に到達、波は扇状に広がり、紀伊半島沿岸部は波に飲み込まれ、四国、九州、東海まで津波は襲います。恐ろしいばかりの映像でした。和歌山市には地震発生から約50分後に津波が到達します。揺れを感じてから、この50分の間に行動する必要があります。
 そして津波は6時間以上続けて襲ってきます。特に紀伊水道は、浴槽を揺らした状態と同じで、徳島県と和歌山県の間の波は行ったり来たりするため、何度も津波が押し寄せることになります。
 第1回の津波から4時間後の津波が、揺れの増幅により最も大きいとされています。
 イメージ的に、津波は波ではなく流れです。高潮のように一時期だけ波が押し寄せるのではなく、大きな波が何kmも続けて流れ込むといったイメージなのです。

 また、阪神・淡路大震災(1995.1.17)の再現フィルムを見ましたが、家、ビル、高速道路の倒壊、火災、家の中のものが激しく落ちてくる様、停電と火が襲ってくるなど、自分の目の前で起こる状況を見ていると、恐ろしいものがありました。恐らく、逃げられないだろうと思う程の揺れと、仮に外へ出られたとしても壊滅的な街の状況を見、絶望的な思いになるのです。

 そこで質問です。
 津波の怖さは想像以上です。行政に求められることは沢山あると思います。
 市民への情報提供、津波発生の場合の行動指針、短期的な対策、長期的には災害に強いまちづくり計画などが考えられます。
 和歌山市でも非常に迅速な対応を行っています。来年度に防災局を設置し、ハザードマップ作成など検討されていますが、大切なことは、予測データをまとめるのと同時に、市民に津波地震での避難方法、家庭や地域でどのような防災対策をとるべきかを知らせることだと考えます。
 現時点での市民への情報提供の程度と、今後市民への周知予定をお聞かせ下さい。
 また、地震被害の軽減のためには、事前の耐震対策と発生後のリカバリーが重要ですが、補助金支出を含めての対応策、例えば県と市が共同で耐震補助金制度を設けるなど検討して欲しいと考えますが、当局の考え方をお示しください。


 以上

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平成15年9月 和歌山市議会一般質問について


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