元巨人軍のエース、桑田真澄投手の講演を聴いた方が「桑田さんは素晴らしい方だと思います」と絶賛して話の内容を教えてくれたので、その一部を記します。
桑田さんはプロ野球にいるとき「努力」の言葉を常に頭に置いていました。努力には表の努力と裏の努力があるのです。表の努力とは野球選手としてランニングや筋トレなどです。
そして裏の努力とはトイレ掃除、雑草抜き、ごみ拾い、挨拶と返事、靴が乱れていたら整えることなど、高校時代から率先して、できるだけ人に見られないようにしていたそうです。
桑田さんの努力は短時間集中型で、毎日少しずつコツコツ続けただけだと言います。高校時代は午前6時30分に起床して、毎日5分間、誰もいないところで便器を一つだけピカピカに磨きました。次の日は別の便器を磨いていたのです。裏の努力をしてから表の努力をしたのです。裏の努力が土台にあって、その上に表の努力が重なるイメージです。
人生に必要な運やツキは、たまたま訪れるのではなくて貯金できるものだと言うのです。貯金の仕方はトイレ掃除であり挨拶であり、ごみ拾いだったと解釈しているそうです。
試練というのは練習をして努力をして、試合や会社などで自分がどれだけできるかを試してみることです。試練とは挑戦のことで「挑戦しなければ何も始まらない」と思い、表の試練はつらくて苦しいのですが、裏では鍛錬をして努力をして自分を試しているのです。
プロ野球の世界の凄さも感じられる話がありました。
野球は一流と並みの選手とは数字や年俸で凄い差が出ています。でも実技にするとたったの1センチだそうです。バッターがホームランを打ったとして、たったの1センチずれていたらアウトだったのです。ピッチャーがボールを放す瞬間に1センチずれるとキャッチャーのところでは30センチの差になるそうです。この1センチという紙一重の差が一流と並みの選手、一軍と二軍の差になっているのです。紙一重の世界がプロ野球の世界だそうです。
桑田さんは挫折ばかりの人生だと話していたそうです。プロ野球の一流投手でしたから、そんなことは1ミリも思いませんが、本人は「何故、結果を残せたかというと見えない力、つまり裏の努力によって運やツキを得られたから」だということです。小学校、中学校の時は「たいした選手ではなかった」と言っていたそうですが、高校時代に裏の努力によって自分を編み出したという話です。
多くの人は好きなことには表の努力はしますが、裏の努力はしていないと思います。大事なのは人が見ていないところで行う裏の努力であって、それは続けることで貯金ができるものです。トイレ掃除やごみ拾い、挨拶と返事、靴を揃えるなど、当たり前のことを当たり前にすることが裏の努力であり、毎日続けることが大事なことです。
ただ毎日続けることこそが努力であり、実際は簡単ではないのです。地位や立場が高くなると、掃除やごみ拾いはしなくなりますし、自分から挨拶もしなくなります。裏の努力を怠ると貯金は減っていきますから、並みの人になってしまいます。それが嫌ならいつまでも裏の努力を続けることです。桑田さんは、今も表と裏の努力をコツコツと続けているそうです。