743.勉強の必要性
 発展途上の子どもにとって勉強は必須で、これを乗り越えなければなりません。しかし簡単で楽なことを好むのが人です。私たち大人も同じ体験を持ちながら生きてきたので、その時代にとって勉強は楽しくなかったことは良く分かります。

 勉強で大切なことは反復することです。勉強の基礎は基本部分を覚えることから始まります。言葉を覚えること、公式を覚えること、英単語を覚えることなどですが、一度で覚えられる人は少ないと思います。何度も繰り返して暗唱したり、ノートに書いて覚えていきます。この繰り返しを省くと覚えられませんから、次の学習段階に進むことができません。反復訓練こそが基礎をつくる段階で大切なものなのです。

 ところがこの反復訓練が楽しくないので、やっている途中で止めてしまいます。そこから勉強が楽しくなくなるのです。ですが覚えていないと思っていても、実は頭の中に単語が蓄えられているのです。何度か繰り返しているうちに覚えてしまい、思い出そうと苦労しなくても言葉がでてくることになるのですが、そこに達しない内に止めると駄目なのです。ですから反復訓練が基本中の基本なのです。これは勉強に限らず仕事でも言えることです。大切なことは反復する中から覚えていくのです。

 他にも大切なことがあります。読書です。読書が好きな生徒は国語力と文書力は身についています。全く本を読まない生徒は、読書をしてきた生徒に文書力で勝つことは困難です。読書の効用は良く言われますが、読書は想像力を身につけさせてくれることが大きいのです。言葉を知っていてもその文章の中の使われ方によって意味が違ってきます。その意味の違いを、考えなくても想像力で理解できるのです。長文問題では、「作者の意図するところは何ですか」との問いがあります。想像力のある生徒は文章全体から各文を把握できますから、作者の意図しているところ、主題や読者に伝えたいことが判るのです。

 これは考えて考え抜いて答えを見つけるものではなくて、自然に見抜けるものです。これが読書をした人の想像力なのです。もっと解説すると文書を文面だけで読むのではなくて、文章の間を読むこと、つまり行間を読むことができるのです。行間を読む感覚を伝えることは難しいのですが、文に書かれていないけれど、その前後の文からの展開でその文の裏面に隠れていることが判ることなのです。

 「その男はその場所へ行った」だけでは、それだけですが、その前に書かれているストーリー展開を理解していると、行間を読むことが可能となります。その男がその場所へ行ったのは、復讐のためなのか、銀行に行くためなのか、取引をするためなのか、この一文だけで判るのです。

 これは簡単な事例ですが、条例と実際に起きたことを照らし合わせて、条例を解釈できる力も行間を読む力ですから、小さい頃からの読書は生きる力を備えることからも大切なものなのです。

 文書題を解けることは、社会で起きる問題解決能力を身に付けているようなものです。その基礎は読書にあります。本を読んで想像力を身に付けておくと、社会で毎日のように起きている問題を解決する力が備わるのです。これが生きる力なのです。勉強とは、社会で生きる力を備えるためのものなのです。

 そこまで分かっていたら勉強は楽しいものになりますが、社会経験がない時代の学校での勉強ではそこまで至っていません。そのため大人は子どもに勉強をしなさいと言いますし、子どもは何故勉強しなければならないのかと大人に反発するのです。それは大人と子どもに社会経験の差があるだけです。ですから、今の子どもが大人に劣っていることは絶対にありません。子どもは常に前の世代である大人を追い越していくものです。追い越せる環境、つまり勉強をする環境を整えることが大人の役割でもあるのです。

 勉強は反復訓練と想像力、それは繰り返すことと読書が大切だということです。

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