700.WBCその6
 第二回ワールド・ベースボール・クラシッの日本チームの優勝は、もう日本プロ野球の歴史を刻む伝説になっている感があります。今もWBCの興奮を伝える報道は続いています。

 テレビ放送で、韓国との決勝戦で決勝打を放ったイチロー選手のインタビューを見る機会がありました。違った興奮がありました。
「結果に自信を持ったのではないのです。そこに至るまでの自分のあり方に自信を持った。これ以上の怖いものはなかなか出てこない」。

 優勝したことよりも、優勝するまでの過程に苦しみを感じ、その壁を乗り越えられたことに価値があると言っているのです。心が折れそうになった気持ちを乗り越えられたのは、チームメイトの励ましと監督からの変わらぬ信頼だったようです。世界最高の選手をしてそうですから、人にとって周囲からの励ましと支えがどれだけ大切なのか良く分かります。

 人は結果で評価されることがありますが、実は結果を出すための努力の過程が大切なのです。簡単に結果を出せるものは苦労するものではありません。大きな結果を出すには苦労が伴うものです。先が見えないような苦労を乗り越えた時に、望むべき結果が表れるのです。そこに辿り着いた人にとって、次に結果が見えない事態に陥っても恐れることはないのです。

 決勝打を放った打席に入る時、「ここで打ったらすごいことになる。でもここで打たなかったら、もっとすごいことになる」と思ったそうです。
結果を出すことを求められているイチロー選手と比べると、私達の多くは常に結果を求められていない存在だと思います。

 日本中から注目を浴びている圧力は、それを体験していない私達には想像することはできません。その分気楽に行動することができますから、圧力を感じないでいられるだけ結果を出しやすいのです。

 期待されていることは圧力になります。しかし圧力を受けることは成長につながるのです。人から見られる環境の中でのプレイや仕事をすることで人は成長するように、圧力を感じる状況の中でも普段の力を発揮できたら、期待値を上回る結果を出すことが可能となるのです。

 誰にも期待されていない場合や、誰からも注目されていない状況で仕事をしていても、決して実力が身に付くことはないのです。圧力を感じられない中でどれだけ結果を出したとしても、社会から認められることはありません。

 自分が行動した結果に納得することは大切ですが、そこから一歩踏み出して、社会から認められる結果を出すことで、個人の結果が社会の結果になります。個人の結果よりも社会で認められる結果の方が、より素晴らしい結果であることは言うまでもありません。

 最高の結果を出して第二回ワールド・ベースボール・クラシックが幕を閉じました。次は四年後の開催ですが、四年間は余韻の残る勇気と元気を与えてもらいました。

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