691.そのうち、いつか
 「明日になれば何かいいことがあるだろうなんて気持ちで生きていても、いいことなんて起きるわけがない。今日やらないことは十年たってもやれない。「そのうち、いつか」と言う例は現れたためしがないんです」。(ある月間誌の中の元日本航空の国際線客室乗務員の黒木安馬さんのインタビュー記事からです)

 今日は昨日の延長線上にあります。明日は今日の延長線上にあります。これは真理で間違いのないことです。もし今日が消えて明日がやってくるような事象があれば別ですが、現代ではそんなことは考えられません。ですから、昨日と今日、そして明日は連続しています。出来事も考えたことも全て連続していますから、今日から直ぐに良心と社会で通用する考え方に基づいた行いをすべきなのです。

 今日できないことは、明日もできません。ですが今日できなくても、今日からできるための第一歩を踏み出せば、明後日になるとできるかも知れません。一年後にはできるようになっているかも知れません。三年後にはその道の達人になっているかも知れません。ですが何もし始めていない今日の私にとっては素人なのです。

 過去から存在している全ての達人や名人も、それに取り掛かる最初の日の前日は素人だったのです。将棋の羽生永世名人。将棋に出会う前日までは将棋の素人でした。メジャーリーグ、シアトルマリナーズのイチロー選手。野球に出会う前日までは野球の素人でした。そしてメジャーリーグでデビューする前日までは、メジャーリーグで一本の安打も打っていない、メジャー実績のない野球人でした。メジャーリーグで初安打を放つ前日までは。

 世紀の難工事といわれた黒部川第四発電所とダムの建設。当時関西電力の経営者であった太田垣社長が決断をする前日までは、それが実現する筈はありませんでした。その日、やろうと決断したことで現在の黒部ダムが存在していますし、私たちは平成の今もそれを見ることが出来るのです。

 彼らは「そのうち、いつか」とは思わないで、出会った瞬間に、将棋や野球に取り組んだ筈です。そしてそれが将来、自分を頂点に導いてくれるとは思っていなかった筈です。

 明日にいいことがあるようにと、今日の練習頑張ってきた結果が将来に花開いているのです。そして恐らく今日も、練習を続けている筈です。何故なら、今日の結果が明日であることを知っているからです。今日やったことが明日に反映されます。そして今日やらなかったことは確実に明日に反映されます。

 今日やってもやらなくても明日は何も変わらないと言う人がいます。それは変化が小さすぎて変わっている感覚がないからです。住む場所を変える、職場が変わる、卒業するなどの大きな変化があれば、昨日と今日は変わっていることを実感できますが、大抵の場合、今日の延長線で生きています。同じ線上の坂を歩いているとゆっくりと感じられますが、今日よりも明日の方が頂上に近づいていることは確かです。

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