574.バトン
 NPO法人「有害環境から子供を守る会」代表である岡崎正子さんは大阪府下を中心に活動をしています。その活動は、子どもを有害図書や社会環境の危険から守るために小、中学校、高校で講演を実施しています。既に400校以上、延べ8,000人以上の生徒や保護者に対して、講演を行っています。

 岡崎さんの活動に関して、思いつくままテーマを列挙すると、エイズから身を守ること、性教育、人生の価値についてなどが該当します。つまり自分の身体と精神を大切にしながら、後悔しない人生を歩もうよとのメッセージを発信しています。
 高校生以下はエイズの知識は週刊誌程度のもので殆んどないのですが、岡崎さんの話を伺うと、私も同程度の知識を有しているだけであることが分かりました。エイズの怖さと感染の可能性については、正式に聞いたことがなかったので、その怖さを再認識しました。エイズの怖さとは、今までの人生が一瞬にして劇的に変わってしまうことです。そして再び今までと同じ人生の線路に戻れなくなるのです。精神的には発病の不安との闘いと閉ざされた人生を実感します。身体的には異変との闘いと薬漬けの日々。経済的には一ヶ月20万円から40万円の薬代の負担。平穏で可能性のある人生が変わってしまうのです。

 世界中でエイズ患者は3,950万人だと推計されています。一日1万人が新たに感染し、一日700人が死亡しています。そして先進国の中では唯一日本だけがエイズ患者が増加し続けています。特に10歳代から20歳代の若い人の中において増加中で、性の意識の欠如と正しい予防策を学んでいないことも要因の一つです。
 若い人達はその場を楽しむことは多いにすべきことですが、人生を謳歌するためには意一時の快楽に身を任せてはなりません。10歳代にして将来を失うことは人生を犠牲にすることです。エイズの危険性を知っているならまだしも、正しい知識がないまま感染することは悲劇です。
 自分ひとりの身体なので誰にも迷惑を掛けないとの意見に対しては、相田みつをさんの「自分の番 命のバトン」を例にして、それが間違っていることを話してくれました。
 簡単に説明すると、自分の両親は二人。おじいちゃんとおばあさんにまで遡ると4人ですが、先祖を10代遡ると1,024人になります。そして20代遡ると100万人を超えるのです。つまり私達は誰一人の例外もなく無量の命を受け継いでいるのです。時を越えて自分の命の番をいただいて生きているのですから、自分の番で終わりにしてはならないのです。

 性教育から人生を学ぶことができます。性を商品にしてはいけません。性が商品化されると市場が膨らみ、やがてその価値は低下していきます。価値が下がるとより多くの人に開放されますから危険度も増していきます。それ以上に大切なことは、自分の生命と身体を商品化させることは祖先と人生を裏切ることになることです。自分の番を大切にすることが生きることですし、残念ながら二度と自分の番は廻ってこないのです。先祖から託されたたった一度の機会。大切に生きて次の人にバトンを渡したいものです。

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