541.夏に向かう
 和歌山市内の和歌山城を眺められる中心部に、フォルテワジマ十番丁ビルが竣工しました。12階建てで和歌山城と同じく立ち並んでいる姿は、中心市街地の明日を感じさせてくれるのに十分過ぎる程です。和歌山城の高さよりも約6m低く抑えているため、フォルテワジマ十番丁ビルの最上階である12階からでも和歌山城を少し見上げる感じになり、最も美しい姿を眺望できます。城下町ですから、お城を見下ろす感じは避けたいところですから、オーナーと設計者の思いは一致しているのです。

 設計者の思いを聞くと設計の力が伝わってきます。和歌山城の北に位置する土地の力を利用することを前提に設計をしたそうです。つまりマンションの窓に飛び込んでくる和歌山城の眺めが、住む人にとって最高の「モノ」になりますから、その力を活かすことだけを考えれば良かったというものです。

 最高の「モノ」とは人によって解釈は異なります。「ステイタス」と感じる人もあれば、「贅沢感」或いは「癒されること」や「時間の流れ」と感じる人もいるのです。ここで暮らすことによってそれぞれが感じられる最高の「モノ」が窓から見えることが一日の始まりを爽快にしてくれますし、一日の終わりを静かに締めくくってくれます。

 どっしりとした重みと季節感を漂わせてくれる光景が巨大な窓から眺められます。今は桜、夏には新緑、秋は紅葉、そして冬は雪がありませんが、深みの出た枯れた風景を見ることができます。四季を感じることができる日本人が住む場所としては、和歌山市の中では最高のところのひとつだと思います。

 春の眺めも和歌山市が誇る最高の桜と、絶好の角度に位置した和歌山城でした。この眺めは土地の持ち力であり価値を生み出すものです。その土地が持つ力を発揮させることがまちの活力につながります。今日のフォルテワジマ十番丁ビルと、同じく式典で訪れたフォルテワジマの二階から四階フロアがまちなかに登場したことは、中心市街地を復活させてくれるシンボルのように感じます。

 中心市街地にシンボルタワーが出現、県民のプロ野球チーム「紀州レンジャーズ」の結成、そして明日、平成20年4月1日に誕生するコミュニティFM放送「エフエムわかやま
 など、和歌山県が元気になるための春の訪れなのです。和歌山県の今の位置が冬から春に向かう季節だとすると、これから大輪の花を咲かせる夏が訪れます。夏の訪れを告げる企画はまだまだありますから、和歌山県はこれから楽しみな季節に突入していきます。

 それにしても、和歌山市のためを思って投資をしてくれる経営者がいてくれることに感謝するばかりです。今までは決して好転していなかった和歌山市中心市街地に投資の決断をすることは、まちを愛する気持ちと先を見通せる力、そして後がついて来てくれると決断する度胸などが必要です。つまり、優しさと将来のあるべき姿を描ける力、そして決断力を兼ね備えた人がまちをリードしてくれている状況にあります。この機会を最大で最後の機会と捉えて周囲も協力体制を取りたいものです。
 その時、季節は初夏に向かい盛夏を迎える筈です。和歌山県は冬よりも春から夏の季節が似合います。

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