538.枝と幹
 フォルテワジマ、そしてフォルテワジマ十番丁ビルがオープンし、中心市街地の活性化への期待が高まっています。和歌山市にとって、民間事業者である和島興産が投資と協力を行ってくれている今が、和歌山市再生の最大のチャンスです。何となく、和歌山市中心市街地活性化基本計画が国の認定を受けて安堵感が漂っていますが、そうではありません。計画を書くことは出来るのですが、実行するためには相当な力を要するものです。事業主体を核として協力体制を整えたいものです。

 さてフォルテワジマの二階から四階までのフロアとフォルテワジマ十番丁ビルのオープンによる式典が平成20年3月31日に行われました。平成20年度内にオープンすることになりますが、関係者の皆さんの圧倒的な仕事量を伺うと大変だったことが分かります。このことに関して島精機製作所の島社長と話をすることが出来ました。

 単に中心市街地において商業施設とマンションを経営するのではなくて、和歌山市の中心地域を活性化させるための取り組みに努力され、自己資金を投入しています。フォルテワジマ十番丁ビルのエントランス部分には、けやきの木が植栽されています。けやきの木は和歌山市のシンボル的な存在で、JR和歌山駅から和歌山市役所に向かう通りは「けやき通り」と名付けられている程です。


 島社長は、フォルテワジマ十番丁ビルのエントランスにあるけやきの木を、栃木県から取り寄せています。この木は17トンもありますから、運搬に4日間、植栽に際してもクレーン車を使っています。また木の形が素晴らしいのです。当然のことですが幹は一つですが、枝が芸術的に八つに分かれているのです。イメージすると、蛸を逆さまにしたような形です。そしてこの木の姿には、島社長の思いが表現されています。

 まず一つは、中心市街地のシンボルタワーとするために日本一のけやきの木を植えることが必要と考えたのです。どこにでもあるような木だと通りかかる人は気付きませんし感動もありません。しかしこの木は、気付かない人はなく絶対に人の注意を惹くものだと思います。その大きさに圧倒され、その姿に感銘を受ける人もいる筈です。

 二つ目の理由です。けやき木の八つの枝は情報や仕事の流れを表現し、幹は人の頭を表しています。つまり考える頭は一つなのに、昨今、情報は幾つも入ってきますし、仕事は多岐に及んでいることから、それらを上手く整理しないと無用の長物になるというものです。情報は必要なものを選択して頭に入れておくことで、組み合わせて活用することが可能となります。仕事は専門化と知識化が進み、全ての工程を一人で賄うことは困難になっています。つまり個人においても会社においても、全工程をぶつ切りにして一部分だけを担っていますから、どうしても全体を考えて仕事が出来なくなってしまうのです。木を見て森を見ずの状況ですが、本人はそれが分からないのです。
 そこで情報や仕事の工程を表している八つの枝はそれらを上手く整理して、頭に入るようにしなさいという意味を込めているのです。その意味を私達に伝えるため、それを表現する形の木を日本中捜して栃木県で見つけたのです。
 本来必要なものではなく投資するものではありませんが、イメージとメッセージのために相当の費用を掛けているのです。夢を持ち計画を立て、熱意とメッセージ性を持って行動する。これがまちづくりを担う人の姿勢でありエネルギーなのです。

 頭は一つですが、頭を使うためには情報と知識が必要で、それらのものは沢山あるだけでは役立たないので、上手く整理しなさいと教えてくれたようです。
 島社長との懇談の後、現場で確認しましたが、植え込み作業中の職人さん曰く「こんな立派なけやきの木は見たことが無い。日本一です」とのことでした。確かに圧倒される存在感と強いメッセージを発していました。

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