443.年金
 初心忘れることなかれ。簡単なようで簡単ではありません。しかし、たまには初心を忘れない環境に戻ることで、気持ちを再認識することが可能です。今日は心が痛みました。
 和歌山県は関西では最も高齢化が進んだ県であり、全国でもトップクラスに位置しています。ですから高齢化世帯が安心して過ごせる地域でありたいと思いますし、そんなまちづくりを目指したいところです。
 ところが年金で生活している世帯の生活は大変な状態です。昨年もそうでしたが、年金で生活をしている人にとって少しでも差し引かれる金額が増加すると、忽ち死活問題になります。

 「毎月の資金繰りが大変で毎日の生活も困り始めています。誰にでも話せることではありませんから余計に苦しいのです」。多分、誰にも相談できない年金世帯が多いと思います。
 月々1万円捻出することが如何に大変なことか。この痛みを分かる人間でなくてはなりません。年金から差し引きされる金額が増加すれば、他に収入がないだけに支出を押さえる以外に生活を維持する手段はありません。現役世代なら能動的に収入を得る方法もありますが、年金世代はそのことが難しいのです。

 働ける年代や環境ではない方が収入を減額されたら、日々の生活を切り詰める他ありません。只でさえ年金で贅沢な暮らしはしていませんから、切り詰めた生活を更に、切り詰めることは容易ではありません。
 誰にも相談できずに、そして夫にも内緒で生活費を切り詰めて、何事もないように普段通りの生活を過ごす。このことは精神的苦痛を伴うものです。生活の厳しさと精神的苦痛と共に暮らしを営むことの厳しさを、年金制度設計を行っている人の内、どれだけの人が分かっているのでしょうか。

 私も現在の生活を見詰め直すことから始めたいと思います。社会に出た頃の初心に返って、支えてくれる人がいたからこそ、現在があることに感謝する気持ちを忘れないでいます。アルバイトで、月に2〜3万円のお金を稼ぐことが大変だった時代を忘れてはならないのです。1万円札を見るのはお年玉だけだった時代から、自分で稼いだ1万円札が2〜3枚も手元に出来た時の喜びを思い出したいものです。

 現在の年金や税制の問題は、単に税の公平な負担を求め、世代間の平均化を図る問題ではないような気がします。思うのですが、高度成長期のわが国を支えた現在の高齢者の皆さんは、この国の将来の発展を夢見て、その時の生活と家族との時間を犠牲にしてまで懸命に働いてきたのです。その結果が現在の日本を創っているのです。

 日本の未来を信じて懸命に働き、現在の素晴らしい日本を築いてくれた皆さんに対して、その21世紀という未来が冷たい仕打ちをするようでは、もう次の未来はありません。尊敬すべき年長者を敬う、そんな基本的な教えを守れないようでは、この国を支える力は残っていません。

 再び日本が登り始めるためにも、高度成長を支えた経験者である年金生活者の皆さんを大切に思う気持ちを持つべきです。もう悲しみに満ちた横顔を二度と見たくありません。地方で生活する人の気持ちや痛みを分かる人が政治に携わるべきです。中央で制度設計するだけの人に全てを任せるのではなく、私達の生活の声をしっかりと受け止め、議論の場に反映させることは現役世代に課せられた重要な使命です。

 因果は巡ります。尊敬すべき先輩を敬わないでいると、やがてその立場になった時、次の世代は前の世代に対して、同じような仕打ちをすることでしょう。
 私達は良い生活循環を作り、将来に希望を持てるためにも、高齢の方が悲しむことなく楽しく生活出来るような社会にする責務があります。現在の高齢者の方は、年金を貰ったからと言って、そのお金を自分のためだけに使ってしまう人は殆んどいません。子どもや次の世代のためにお金を使ってくれる方々です。そんな気持ちを持った方達にお金を循環させない方がおかしいのです。

 笑顔で生活する高齢者家族をいつまでも見ていたいものです。初心を忘れない。そんな気持ちを取り戻させてくれたことに感謝しました。

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