391.雇用問題
 全国の雇用情勢と和歌山市の雇用情勢について意見交換を行いました。周知の事実ですが、製造業を中心として正社員の比率は低下し、派遣社員の比率が高くなっています。日本企業が国際競争力を回復し、業績を伸ばしている要因のひとつに人件費比率の低下が挙げられます。人件費が低下しているのは、派遣社員を受け入れているからです。ある大手企業では正社員と同程度の派遣社員を工場内で受け入れているように、派遣社員は企業にとってもはや欠かせない戦力になっています。

 派遣社員とは、派遣先から受け入れ企業に人材を、文字通り派遣し、受け入れ先の企業から仕事の指示を受けます。現在、同一人物の派遣期間は1年間となっていて、それを超えることは出来ません。来春の法改正で3年間に延長されると聞いていますが、それでも3年間で派遣先から引き上げる必要があります。契約社員が派遣先の仕事に慣れ、効率が上がってきたところで契約満了となるのがひとつの問題です。
 これを解決するためには、仕事を覚えて戦力となっている契約社員を正社員として雇用してもらうことです。契約社員のやる気も出ますから望ましいことですが、企業の人件費が増加することから、労働者側からすると好ましいことでも経営者側からすると「はいそうですか」とはなりません。

 しかし、もっと重大な問題があります。それは契約社員の立場でいると、派遣先があり、当該業務に対する対価としての年収が仮に250万円だとすると、何年そこで仕事をしても年収は250万円のままです。理由は簡単で、派遣社員の場合、業務内容によって年収は決まりますから、業務内容が同じである限り年収は増加しないのです。受け入れ企業にとって派遣社員にしてもらう業務は決まっていますから、仕事に慣れたからと言って、また派遣社員の仕事に対する能力が上がったとしても、次の段階のレベルアップした仕事を与えてくれません。
 ですから同じ派遣先にいる限り、何歳になっても年収は一定で、上がることありません。極端な場合、20歳で年収250万円の派遣社員が40歳になっても、同じ仕事をしている限り年収は250万円なのです。(仮定なので派遣期間は除外しています)

 経済基盤が弱いことは、派遣社員である人にとって明らかに不利です。結婚しても収入が増えないため会計が厳しいこと。教育費や養育費などの問題から子どもの出生に影響すること。収入が一定のため消費に廻すお金は限られていること、などの問題があります。
 つまり消費の停滞、少子化、結婚の晩婚化の問題など全てに関連してくるのです。また生涯収入は正社員と派遣社員とでは大きな差が発生します。現在社会における企業は派遣社員がいることが前提となっていますが、派遣社員は一時的な雇用を生み出しますが、若者の労働力を消費しているに過ぎない一面があります。やはり年齢、生活ステージに応じて収入が上昇する従来の日本的賃金体系は良く出来た制度です。経済的安定、将来の収入の見込みがあるからこそ、家庭を持ち子どもを育てられるのです。将来の展望が持てないとすると、配偶者や子どもに責任を持てませんからその負担をなくそうとします。少子化、経済の低迷、地域の活力を失うこと、全てに通じていくのです。生活の安定と将来計画は経済の安定から始まります。
 雇用問題を考えると、和歌山市に若い人達をひきつけ住んでもらうためにも、重要な問題あることを再認識できます。

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