314.ものを大切に
 ものを大切にしない子は絶対に伸びない。長い年月を教育に携わってきた方から聞いた言葉です。小さい頃に学校の成績が低迷していても、伸びるか伸びないかの判断材料となるのが、先生の言うことを聞ける素直さとものを大切にする姿勢です。
 最近は紙やノートが豊富にありますから、ページに空白があっても出題問題が変わるとそのページを残して次のページに回答を書き込むことがあります。つまりノートに余白部分が非常に多くなります。
 また文字の練習をしていても、最初の一文字を書いた時に文字の形が整わなかった時に、紙をくしゃくしゃと丸めてゴミ箱に直行させる子どもがいます。最初の一文字を失敗しただけで後を続けないで紙を捨てる、ものを大切にしない気持ちの現われです。ノートは大切に使うこと、習字用の紙は最後まで書き切ること。このことを教えても中々身につかないと言います。

 100円均一ショップの登場によって、きれいなノートや紙は安価に購入することが出来る時代になっています。そのため大人は、子どもの学習のために機材を買い揃えます。学習に関するものなら何でも買い与える大人の姿勢が子どもを駄目にしていくのです。
 私たちの子どもの時代には、真っ黒になるまでノートを使うことや新聞の折り込み広告で裏面が白地のものを保管しておいて、計算や習字の練習をしたものです。今の子ども達にそれを求めても仕方ないことですが、殆どが空白だったり裏面を使えるのに使えないノートを見ると残念だなと思うことがあります。 
 
 ある先生がこのようなもったいないノートの使い方をしている子どもに対して「お金があるからと言ってノートを無駄に使っても良い訳ではありませんよ」と叱ったのです。一度だけではなく何度も同じことを繰り返していたので、見るに見かねて発した言葉です。愛情を感じる素敵な言葉です。ノートはお金で買えますが、知識や大切にしたい心はお金で買うことは出来ません。
 大人になって自分の道を歩き始めたら全て自分で考え行動しますから、辛くても孤独でも教えてもらえることはありません。教えてもらえる期間は学生時代だけですから、人生の先輩からの叱咤激励は好意的に受け止めて、気持ちの中に反映させなくてはいけません。
 好意的に受け止めるには素直な気持ちの持ち主である必要がありますし、次も同じ注意を受けるようでは伸びることはありません。ノートに空白を残さないなんて注意、そんな小さなことを守れなくても大丈夫、もっと大事なことをすれば良いのだからなど思うことは誤りです。
 小さい注意も守れないでいるなら、重要な仕事を任せてくれることはありません。それに自分が体験していないことを教えてもらっているのですから、何が小さいことで何が重要なことなのか、自分では判断する材料を持っていないのです。まず取り組むことをしないで、何が大切なのかは分かるものではありません。
 ものを大切にする。簡単なことから始めることが次の段階につながっていきます。経験を持った先輩や先生の経験から来る言葉は、それ程誤っているものではありません。

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