301.WBCその2
 世の中、絶対に諦めたらいけないことを教えられました。前向きな気持ちを持ったうえで諦めなかったら奇跡は起きるものです。平成18年3月17日、ワールド・ベースボール・クラシックの二次予選アメリカ対メキシコの試合で優勝候補のアメリカが敗れ、日本チームの準決勝進出が決定しました。

 前日の3月16日、日本対韓国の試合では1対2で韓国が勝利したため、日本チームは1勝2敗となり準決勝進出は極めて難しくなりました。日本チームのイチロー選手は「僕の野球人生で最大の屈辱の日」と表現したように悔しさが滲み出ていました。この時点で日本チームが準決勝に進むための条件はアメリカが敗れること、しかも対戦するメキシコチームが2点以上取ることの厳しい条件でしたから、ほとんど日本チームが次の試合を戦う可能性はないと思っていました。

 ところが奇跡のような出来事が起き、その可能性が実現したのです。他力本願と表現している人もいましたが、絶対にそうではありません。日本チームは韓国チームとの対戦で最後のイニングまで試合を諦めていませんでした。無得点で終わるのと最終回に1点を取った執念があるのとでは次につながる度合いは違います。
 選手達が全力を尽くして対戦チームを最少得点に抑えたことが、失点の少なさがポイントとなったのですから、実力で勝ち取った準決勝進出なのは間違いありません。加えて精神面では、決して諦めない日本チームの気持ちが通じたのです。気持ちを切らさないで、準決勝進出を信じて決戦の地サンディエゴ入り向かった姿勢が運を引き寄せたような気がします。 

 ここに来て盛り上がって来ましたが、その要因のひとつにイチロー選手の存在があります。常に冷静なイチロー選手だと思っていたのですが、発する言葉もプレイもとても熱く、それが日本チームを引っ張り、観戦している私達も引き込んでいます。韓国チームとの試合中、ファウルボールを捕れなかった時に体全体で表した悔しさ。敗戦が決まった時にベンチで何かの言葉を発した表情を見た時は、同じ悔しさを味わいました。
 見る者を同じ気持ちに引き込む程の気持ちと迫力。生きるための勇気を与えてくれるものです。
「同じチームに三回連続して負けることは許されない」
「今までも向かっていましたけど、もっと向かっていく」
 気持ちが現れています。
 人を動かすものは技術や勝利だけではなく、他人の気持ちを動かせる最大の要因は自らが発する気持ちです。
 言葉で表す気持ち。態度で表現出来る気持ち。体から発している気持ち。内面に秘めた気持ち。表に出る出ないは関係なく、内面から発せられる熱い気持が、場所や時間は関係なく周囲を巻き込んでいきます。
 イチロー選手は日本から遠く離れたアメリカにいても、日本にいる私達を熱くしてくれます。日本で暮らしている私達が、身近なところでさえ影響を与えられないのでは問題があります。自らの内心を燃やして周囲に波及させたいものです。

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