299.偶然
 世の中には良い偶然が起きる時がありますが、いつも偶然がつきまとう訳ではありません。偶然に思える出来事でも実は偶然ではない事が多いのです。
 仮想の話ですが、あるレベルの高い陸上競技大会の準決勝戦。予選最下位の選手が登場。同じ組の有力選手達が次々と転倒したため決勝戦に進出することが出来ました。そして決勝戦。ここでも優勝候補を初め有力選手達の体調が悪かったり、次々と途中で競技をリタイアするなどしたため予選最下位の選手が優勝してしまいました。
 この選手が優勝出来たのは偶然でしょうか。一見偶然と運だけで勝ったように思えますが実のところは違います。予選最下位の通過であったとしても、元々レベルの高い大会に出場するだけの実力があった訳です。力があったからこそ競技会に出場出来ているのですから、偶然だけで優勝したことではないことが分かります。全く大会に出場出来ない程度の選手であれば、偶然が重なったとしても優勝することは出来ないのです。

 トリノオリンピックの女子フィギュアスケートの荒川静香選手。日本唯一の金メダリストとして賞賛されていますが、米国では批判の報道もあると聞きます。それは初日のショートプログラムで荒川選手よりも上位にいた二人のメダル有力選手が、フリースタイル演技で転倒したため点数が伸びないで順位を落としたから金メダルを獲得出来たとする論評です。つまり有力とされる二人の選手が無事滑りきっていたら荒川選手の金メダルはなかったので、荒川選手の優勝は偶然だとするものです。
 果たしてこれはおかしな論評です。実際に有力選手は完全に演技が出来なかったのですから、敗退した理由が例え体調不良であったとしてもプレッシャーであったとしても理由にはなりません。

 荒川選手が金メダルを取れたのは偶然だとする論評は的を得たものではありません。先の例でも分かるように偶然で金メダルは有り得ないのです。世界レベルの大会で実績を残し、最終選考での厳しい競争を勝ち抜いて日本代表選手となったのです。オリンピックに出場するレベルの選手は運だけで勝ち残れる筈はありません。
 そして誰もが緊張する初戦のショートプログラムを3位で通過した時点で、上位の二人を交わして優勝するための戦略を練った筈です。演技はミスを無くすために抑えたものにしたのか、完璧を狙える技に変更したのか専門家ではないので分かりませんが、いずれにしても持っている実力を発揮すれば勝てる戦いを展開したのは間違いないところです。
 その結果、上位のふたりの選手がミスを犯して順位を下げ荒川選手が優勝したのです。これは決して偶然ではないことが分かります。実力がある選手が持てる実力を最大限に発揮して結果を待つ。これが自分の力で出来る最大の努力です。オリンピックのスタートラインに立った時点で、誰が優勝したとしても偶然や運だけでないことは確かです。

 仮に偶然だと言うとしても、最低限、偶然を呼び込むだけの努力と実力が必要ですから、全く努力不足の人の下に偶然が舞い込むことはありません。
 自らを信じて可能性を高めた人が実力を十分発揮して、その時点の自分に出来る最大の結果を出す。それが自分に出来ることの全てです。偶然はその実力を発揮した結果に対してついてくるものです。

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