12.安定と不安定
 生態系では、安定している時が最も危険な時期だと言います。人も動物も生活の安定を求めますが、安定を求めた結果、居心地の良い状態になった時そこで安住しようとします。動物なら、餌が容易に手に入る状態や襲われる危険がない場所を見つけた時が安心出来る状態です。その状態が返って危険なのです。


 動物は、環境に適応し安定した状態になると進化が止まります。全ての生物は、能力に応じてゆるやかに進化しています。進化しているから、少しばかりの環境変化には適応し生き延びることが出来ます。
 能力を使わなくても安心出来る環境だと進化が止まり、知らない間に環境変化に適応出来なくなっていくのです。逆に言えば、安定を求め安定した状態になると、既にその時点から不安定に向かっているのです。生物にとって、能力を使わないことが最も危険な状態なのです。自分の能力を最大限に活用することが進化につながります。進化しない生物は環境に適応出来なくなり、その結果、種の絶滅に向かいます。


 いまの時代は哺乳類が生態系のトップに位置していますが、いつまで続くか誰にも分かりません。イギリスBBCで製作された1億年先の地球をシミュレーションした番組では、昆虫類が地球を支配し、唯一進化して生き残った哺乳類のねずみの子孫は、昆虫類に支配される状態となっていました。これは、欧米の科学者たちが空想ではなく、今後の地球環境変化とそれに応じた生物の進化を研究した結果です。
 昆虫の体が今のように小さいのは、大気中の酸素の比率によるものです。大気中の酸素量が増えれば、昆虫の体はそれに応じて大きくなります。昆虫類の特長は、甲の硬さ、体のバネ、体の何倍もある力の強さなどです。体が巨大化してその能力を発揮すれば、地球を支配しているかも知れません。
 人間が現代の環境を支配出来ると考え、この環境下で安定を求めることは、既に不安定に向かっています。循環型社会の概念は持たなくてはなりませんが、人が自然を支配出来ると考えるのは危険なことです。


 社会的存在としての人間も同様で、一定のポジションを得るとそこで安住となりがちです。安定した状態では、上り坂の時のように能力をフルに発揮しません。能力は使うことで更に向上しますから、使わないと衰えるだけです。社会的地位やポスト、肩書きを得るまで以上に進化しないと、後は下るだけとなります。


 人間だけが例外ではありません。安定は進化を止めるのは、生命を持つもの全てに当てはまる自然界の法則です。良い時程、危機に備えて攻める気持ちが大切です。

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