コラム
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2017/3/9
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時間には、眩しくて輝く時間とひっそりとしているけれど大切な時間があることを教えてくれました。どちらも失うことのできない大切な時間なのですが、時にどちらを優先すべきか迷うことがあります。どちらかと言うと、人は眩しくて輝く時間を優先させる傾向があります。光を浴びて称賛される舞台に立ちたいと思うのです。自分だけが経験できるものに興味が湧き、それを実現させたいと行動します。

LALALAND

映画「LALALAND」ではハリウッド女優を目指すミアが主役ですから、いつか自分も眩しくて輝く世界に行くことを夢見ています。何度もオーディションを受けて、酷い落とされ方をしても、また受けるのは夢を叶えたいからです。夢を諦めない力はとても偉大です。しかし一瞬にして夢を諦めない力が折れることがあります。批判の言葉、人からの酷い評価、いて欲しい時に大切な人がいてくれないことなどです。

主人公のミアは「私には才能がない」と恋人のセブに伝え一度は諦めた女優の夢を、「君には才能がある」という恋人の励ましで、最後のオーディションを受けることになります。魂が揺さぶられるようなオーディションでの表現は、「これが最後の挑戦であり、チャンスを作ってくれた恋人への思い」だと思います。

オーディション会場から出てきたミアを迎えたセブは、「合格したらパリに行くべきだ」と夢の実現を後押しします。もう合格していることが分かっているような表情です。

「私達はどうなるの」とミアは言いますが、セブはミアの成功を思い、自分はハリウッドに留まることを決めています。

それから5年後、女優となったミアはハリウッドに戻ります。かつて自分がアルバイトをしていたカフェに立ち寄り、懐かしいジャスが流れるお店に入ります。そこにはかつての恋人であり夢を叶えさせてくれたセブがいました。眩しくて輝く時間を優先させた二人は、ひっそりとしていた大切な時間を失っていました。もしあの時、ひっそりとしている大切な時間を優先させていたら違った人生になっていたと思う二人ですが、現在という時は現在です。

束の間の夢から覚めた二人は、それぞれ別の人生を歩いていることに気付き、少しの戸惑いと少しの後悔の含んだ寂しげな表情をします。オーディションに合格した時、どちらかを選択しなければならなかった二人ですが、その選択は正しくもあり、後悔でもあったのです。

このように人生は選択の連続であり、輝きと後悔が入り混じりながら過ぎていきます。どちらも選択したいけれど、どちらかを選択しなければならない時があります。一つの道を選べば、もう一つの道は閉ざされます。

選択した道は正しい道だけれども、選択しなかった道を選んでいたら、もしかしたら、今と違う眩しくて輝く違った人生があったと思うことがあります。そのことを選択していなければ、その人生はなかったので結果は分かりませんが、眩しくて輝く人生を選択すれば、もう一つの大切な人生が失われることになることがあります。

華やかなミュージカルでありながら、「人生とは」を問いかけた映画「LALALAND」のラストは、成功し夢を叶えたのに、選択次第ではあり得た人生を選択しなかった切ない気持ちが残る結末になっています。人生には選択しなかった人生が残っていて、それが現在の自分の見えないところで応援してくれている。そう思います。