令和2年12月定例会一般質問 / 質問内容

4.ハイテク型の企業誘致について

では次の質問に入ります。今議会、本会議の冒頭、知事から、従来の発想を切り替えて、令和3年度は「コロナ禍から経済とくらしを守り切る」「新しい世界への対応と挑戦」を2本の柱として取り組む方針が示されました。

 

コロナ禍を契機とした社会環境の変化をとらえ、新しい成果を先取りし、和歌山県の発展につなげていけるよう、大規模オフィスの誘致など、和歌山県に企業と人を呼び込むための企業誘致の推進と、新しい時代に対応した「デジタル和歌山」の実現、宇宙関連産業など成長分野における新産業の創出や県発展の基盤となるインフラ整備の取り組みを進めることです。

それを裏付けるように「令和3年度新政策と予算編成方針」において、ポストコロナ時代を見据えた産業、ひと、基盤づくりでは、極めて野心的、戦略的、関西はもとより日本をもリードしていくための考え方が示されています。


生産活動拠点の国内回帰需要を見据えて、新たな企業用地開発や南紀白浜空港でのビジネスジェット受け入れ拡大に向けた環境整備に取り組むこと。宇宙、ロケット関連産業など成長分野の企業誘致、集積に取り組み新しい産業を創出することで、和歌山県発展に必要となる基盤整備を強力に推進する決意を示してくれました。県政発展に向けて時宣を得たものであり、県行政として他府県との競争を勝ち抜こうと強い覚悟を示してくれたことから、共に取り組みたいと考えています。


ここで日本が参考にすべきだと紹介、説明してもらったのが、「中国のシリコンバレー」「世界最先端都市」と言われる深圳です。ここにはテンセント、世界のドローン市場でシェアが70パーセントを超えるDJI 、通信機器メーカーのHuaweiなど、世界トップレベルの企業が集積しています。さらに台湾企業の鴻海精密工業や米国のアップルやマイクロソフトなど、多くの企業が進出しています。

理由は様々ですが、その一つとして経済特区としてハイテク企業に優遇措置を行っているため、全土から優秀な人が集まったことで知識と技術が集積され、設計から製造、組み立て、検品、出荷までを市場が求めるスピードでできるしくみができているようです。


しかし昨今の米中貿易摩擦を中心とした米中の関係が悪化していることから、深圳から移転を考えている外国企業もあるようですし、深圳ではなく安全で安心できる国に進出することを検討している外国企業もあるようです。アジアで最も安全で安心な国は言うまでもなく日本であり、このような国際情勢を汲み取り、和歌山県が受け皿として名乗りを上げ、先端企業が集積する県を目指すことを提案したいと思います。


鴻海精密工業の創業者の郭台銘(かく たいめい)は「今日の世界は大が小を勝つことなく、ただ速いが遅いに打ち勝つ」と企業価値について発言しているように、トップが方針を示し意思決定を早くすることが現代において競争に打ち勝つことにつながると思います。


その中のひとつであるロケット産業に関して、宇宙関連産業の関係者と話し合いをする機会を持っている中での12月6日、「はやぶさ2」が約6年ぶりに地球に帰還し、喜びに包まれました。

NASAからも「小惑星から岩石が持ち帰られるのは歴史的だ。初代はやぶさに引き続き、2回も成し遂げた日本を称賛と祝福する」と讃えられています。改めて、日本こそ宇宙関連産業に相応しい国だとの思いを、さらに強くしました。

さて、ロケット発射だけなら、宇宙ビジネス全体の10分の1程度の規模に過ぎないようで、その工程の前後の企業誘致を進める必要かあります。これらの企業を誘致することで宇宙関連産業が完結することになります。ロケット本体の組み立て工場、研究施設、人工衛星の組み立てや試験工場、教育機関など、和歌山県には大方の宇宙関連産業が集積することを目指して欲しいと思います。

和歌山県がわが国の宇宙関連産業の拠点になれば、ここから技術の移出、製品の輸出につながるので県内総生産に大きく影響を及ぼすことになります。

勿論、人材の育成も同時に目指すことになるので、世界の宇宙関連産業で活躍できる人材を輩出することにもつながります。

事実、宇宙関連産業に関わる方からは「産業を集積しようと思ったら地元で人材が必要となります。いきなり人材を揃えることは無理だと思うので、企業誘致と共に人材育成のための教育機関を同時に設置する必要があります」という話をいただきました。

地元の和歌山大学では宇宙教育が実施できる環境にありますし、人材の育成も可能です。宇宙関連産業と連携することで研究と実践の機会が得られますから、人材育成のしくみは作れると思います。

更にアジアでは、数千機単位の人工衛星を打ち上げる必要性があることの説明を受けてきました。例えば、アジアに衛星電話を普及させるためには、その規模の人工衛星が必要になるようで、そのための発射場が足りていないようです。日本で可能性のある地域は鹿児島県の内之浦と和歌山県だけなので、誘致の機会は十分すぎる程あります。この絶好の機会を逃さないようにして欲しいと思います。


この人工衛星がビジネスとして有望なことは、既に世界の企業が参入を表明していることからも伺い知れます。アマゾン・ドット・コムは、人工衛星を使った通信サービスの参入に関して、100億ドル、日本円にして約1兆400億円を投じて、合計3,236基の周回衛星を配備する計画を公表しています。

参入の目的は、固定通信回線が届かない山間部でも、ブロードバンド通信サービスが利用できる通信環境を整えるためです。


和歌山県の利点は関西空港に近接していること、南紀白浜空港があることです。現在に至るまでも、この利点を生かした企業誘致を推し進めていますが、更に推進力を増してくれることを期待しています。


宇宙関連産業として人工衛星、通信携帯端末関連企業の誘致、さらにハイテク産業としての半導体、全国の自治体が熱心に誘致しているデータセンター、2030年までに30万トンの利用を目標としている水素製造拠点など、将来有望な産業の誘致にも取り組むべきだと思います。

そのためには、企業には保税地域の活用を図ってもらうこと、和歌山県にはハイテク企業集積のための経済特区申請なども視野に入れて欲しいと思います。

台湾出身の華僑団体の方からは「国際経済特区の構築など、ハイテクの外資企業誘致環境が整えば進出に協力していくので、和歌山県がリーダーシップを取って下さい。中でも宇宙関連産業に関しては、和歌山県のリーダーシップを期待しています。ロケットビジネスは和歌山県と鹿児島県だけが機会を持っているのです。和歌山県がやらなければ日本ではなく、アジアの国で産業集積することになります」という話をしています。

質問1:ハイテク型の企業誘致について

そこで和歌山県として、宇宙関連産業などの企業誘致を図るためのお考えについて、知事の考えをお伺いいたします。

答弁者:知事

県では、これまでも新たな産業の創出による地域経済の振興と雇用の創出を目指して、ICT企業や最先端の設備を有する製造工場などの企業誘致を推進してまいりました。こうした中、串本町にロケット発射場ができることを契機として、海外企業も含めた宇宙関連産業等の集積に向けた機運が高まるものと考えております。

ロケット発射場は、本州最南端という立地条件が、むしろ利点になることに着目して誘致活動を行った結果、串本町において日本初の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」の立地が決定し、令和3年度中の初打上げに向けて、建設工事が着々と進められております。

また、10月に衛星工学の第一人者等を招いて開催した「宇宙シンポジウムin串本」では、募集開始後すぐに定員に達したことからも、多くの方々からの期待と関心の高さがうかがえます。

小型化が進む人工衛星は、農林水産業や防災、エネルギー事業など多くの分野で利用が始まっておりまして、これからの世界を変えるようなビジネスの展開が予想され、今後、小型衛星の製造・打上げの数が増大し急速な市場成長が見込まれております。

これまで小型衛星を宇宙空間に運ぶ打上げビジネスは、JAXA等による大型ロケットへの相乗りが中心でございましたが、衛星事業者のニーズに応じてタイムリーに打ち上げることが可能となる小型ロケットによる事業を行っていくのが一番よろしく、そのよろしいことをやっておるのが現在は米国企業一社だけでございまして、「スペースポート紀伊」が多分二番目になるんじゃないか、これへの世界的な期待は大きいと思います。

衛星関連企業にとってロケット発射場に近いことは大きなメリットでありまして、さらに、和歌山県は南紀白浜空港を有しておりますし、今後、紀伊半島一周高速道路の整備が進んでいくと、実は名古屋と大阪に大変近い所でもあるわけでございます。県では、もちろん既存の色んな所の企業用地の活用などはやっていかないといけませんけれども、一方では、この宇宙関連ビジネスをできるだけ集めていきたいという野心を持って、初めからこのロケット発射場の誘致の際にも、それを実現できるようにするにはどうしたらいいかというのをちょっと考えて、あんまり無理を言うとナンセンスになるんですが、努力をしてきたわけでございます。

具体的に言うと、議員御指摘のように前後の裾野産業、これが期待されるわけですが、そのためには発射場の近くに常時スペースワンを中心とするような企業の方々がいつもいて、その人たちと打合せをしたり、色々なすり合わせをしたりする時には、地元で立地したほうが楽だなあとか便利だなあとかいうようになるようにしたい。したがって、常時いる部隊を多くするように色々お願いをして、大体60人くらいはいるようにしたいというような意向も聞いているわけでございます。これはもちろん今の計画でございますので、さらにこれがもっと発展して二つ目、三つ目というようなことになると、これがもっと大きくなるということで期待も持てるわけでございます。

もちろんハイテクは宇宙だけではございませんので、新しい世界として東京一極集中がちょっと衰えてくるから、ITを中心とするようなハイテク企業が、特にオフィス系が展開を始めるだろうなあと、あるいは製造業の国内回帰もある程度進むかもしれない、そんなことを狙って今はチャンスだから頑張らないといけないと6月議会くらいからずっと申し上げてきたことでございます。

ただ、ぼうっとしておると東京の外延的な拡散だけに終わってしまう可能性があり、最近は今のようなことをよそも気が付き始めて、負けないように頑張っていかないといけないので、全力を挙げなきゃいかんなあと思っておる次第でございます。

【挨拶】

最初に述べたように、昨夜、米国との「日米スペース・パートナーズシップ」のリモート会議に参加しました。和歌山県はフロリダ州とオレンジパートナーズ協定を締結していると思いますが、ここにはケネディスペースセンターがあります。そのフロリダ州には「ペンサコーラ航空博物館」があることを教えてもらいました。ここにはフライトアカデミーと言って、世界でたった一つの青少年教育のための施設があるようです。未来の宇宙飛行士、宇宙関係に向かう若者を育てる素晴らしい施設だと聞いたので、和歌山県の宇宙教育との連携を図ることも、宇宙関連産業の一環だと思います。

このことをお伝えして、一般質問を終わります。ご清聴、ありがとうございました。