令和元年6月定例会一般質問 / 質問内容

2.外交史料と近代日本のあゆみ展について

昨年、国の「明治150年」事業の一環として、外務省が外交史料館で「日本の明治外交」展を春と秋に開催し、大変好評であった展示会を和歌山県版にアレンジし開催することになりました。

今年11月2日から12月15日まで和歌山県立近代美術館で開催される「外交史料と近代日本のあゆみ」展は、外務省外交史料館も和歌山県と共に主催してくれますので、全国の皆さんに来てもらえる充実した内容になりそうで期待が高まります。

今回は約40点の外交史料を展示する予定ですし、貴重な外交史料を貸し出してくれる期間が一か月を超えることは異例なことなので、多くの県民の方に来館してもらいたいと思います。

明治外交の最重要課題は、江戸幕末時代に西欧米列強の国々と結ばれた不平等条約の改正を図ることでした。その最大の功労者が、陸奥宗光元外務大臣と小村寿太郎元外務大臣の二人でした。以降、お二人にはお名前だけの紹介とさせていただきます。

ご存知の通り、陸奥宗光は当県和歌山市の出身です。薩長土肥(さっちょうどひ)の藩閥閣僚たちが果たせなかった不平等条約の改正に成功し、日清講和条約、三国干渉の処理などの国難を乗り切った功績により、外務省内に唯一の銅像として建立された人物です。小村寿太郎は成績優秀で入省したものの、当時の藩閥政治によって閑職にされていた小村の才能を見抜いた陸奥宗光が、外務次官まで育て上げ、陸奥の亡き後、残されていた関税自主権の回復に成功し、不平等条約を完結させた人物です。この二人の功績もあり、明治日本は国家独立を守り得たと思います。

和歌山県での開催にあたり陸奥宗光の功績である条約、批准書も展示予定ですから、わが国の明治外交史を学ぶ絶好の機会となります。何より和歌山県で本物の条約や批准書を見ることができる機会は、これ以降はないかもしれませんから、最高の展示になるよう企画をお願いしているところです。

また不平等条約改正までの流れが理解できるように、江戸時代に列強の国々と結ばれた条約から陸奥宗光伯が活躍した証となる史料をお借りすると聞いています。

条約改正までの道のりは長く厳しかったのですが、不平等条約改正があったからこそ、現代の日本があります。歴史は過去から現代まで切れ目なくつながっていること、熱意のある多くの人が関わっていることを学ぶ機会になると思います。

展示される日本の明治外交史料について少し触れます。

江戸時代の外交史料で展示されるのは日米修好通商条約(複製)です。幕末に江戸幕府がアメリカと締結した条約は、外交経験の少ないことから治外法権や関税自主権など不平等な条約になりました。後々、諸外国ともこの条約を基にして締結していくのですが、更に不平等な内容になっていきます。

外交経験が少ない中、条約締結をしていったことが、明治政府が近代化していく上での大きな壁になったのですが、陸奥宗光元外相の条約改正に至る史料の流れを見ることで外交とは何かを考える契機になると思います。

現代社会も都度の政治判断によって方向性が変わっていくことが分かる史料の数々を見て欲しいと思います。誰が政治に関わるのか、誰に政治を託すべきなのかなど、国や地方自治体の方向は、現代を生きる私達の判断次第で変わることになるのです。明治外交史を通じて政治と社会のあり方、私達の暮らしている環境が変わっていくことを寸感じ取って欲しいと思います。

そして何といっても当時、西欧列強と対等の国力を保っていたメキシコと交わした日墨修好通商条約の調印書と批准書の本物の展示です。通商航海の自由と安全を保障し、治外法権を認めない、関税も相互の最恵国待遇の完全な平等条約で、この条約を締結したことで列強との条約改正へとつながっていきます。

歴史は危機に際して問題を解決するために優れた偉人を登場させています。偉人達の考え方、その時の判断とどのように歴史の流れを創っていったのかも今回、学びたいところです。この「外交史料と近代日本のあゆみ」展が素晴らしい企画になるよう期待しています。

質問1:開催趣旨と概要について

新年号3年目の令和3年は「和歌山県150年」であり「第36回国民文化祭」が開催されますが、国民文化祭には新天皇、皇后陛下が御臨席されると聞いています。皇后陛下は元外務官ですから、陸奥宗光元外務大臣へのご関心も高いのではないでしょうか。

皇后陛下が外務省に御勤めなされていた頃、外務省内の陸奥宗光公像を出勤時に毎日ご覧になられていたものと想像致します。

そこで「外交史料と近代日本のあゆみ」展の開催意図と概要について詳しく示して下さい。企画部長の答弁をお願いします。

答弁者:企画部長

「外交史料と近代日本のあゆみ」展の開催趣旨についてでございますが、郷土の歴史や偉人の功績を知ることは、ふるさとへの愛着や誇りを持つことにつながることから、これまでもシンポジウムを始めとして様々な取り組みを行ってまいりました。

今回の展覧会は、明治期の外交史料等の実物を目にすることで、改めて、歴史の歩みと郷土の偉人の功績を再認識していただくことを意図して、企画いたしました。

議員の御質問にありましたとおり、11月2日から12月15日の予定で、「外交史料と近代日本のあゆみ」と題した展覧会を、県立近代美術館において開催できるよう、準備を進めております。

展示内容につきましては、議員の方から詳しく御説明いただいたのですけども、郷土の偉人 陸奥宗光の功績を中心に、明治期の日本外交のあゆみを紹介するコーナーと、開国により世界に広がった和歌山県人などの活動を美術作品を通して紹介するコーナーで構成することとしており、外務省の外交史料館や国立国会図書館などから貴重な史料を多数お借りし、充実した展覧会としていきたいと考えております。

質問2:来館してもらうための取り組みについて

参考までに、平成28年10月、当時の天皇皇后両陛下は、京都市の国立博物館を訪れ「没後150年坂本龍馬展」を御覧になられています。

今回の「外交史料と近代日本のあゆみ」展には、両陛下にお越しいただけるぐらいの意気込みを持って開催して欲しいと切に願います。

続いて、より多くの方に来館してもらうための取り組みについて質問いたします。県民の皆さんを始め、優れた企画なので多くの方々に来てもらうための取り組みについてお示し下さい。企画部長の答弁をお願いします。

答弁者:企画部長

より多くの方に御来館いただくための取り組みにつきましては、県民の友やテレビ、ラジオなどの県の広報番組に加えまして、展覧会の会場となる美術館では、同時期に日本・チェコ共和国交流100周年を記念した大規模展を開催することから、相乗効果を図れるよう連携して来館を勧めてまいります。

また、ねんりんピック開催時期とも重なることから、全国から来県される多くの方々への絶好のPRの機会ととらえ、より多くの皆さんに来ていただけるよう働きかけてまいります。

質問3:開会式後の講演会について

さて開会式に合わせて外務省外交史料館の冨塚一彦『日本外交文書』編纂室長にお越しいただき、明治のわが国の外交について講演してもらうことも希望したいと思います。一級品の展示物と共に話を聞くことで歴史観が深まると思うからです。開会後の講演会についても検討して欲しいと希望しますが如何でしょうか。

企画部長の答弁をお願いいたします。

答弁者:企画部長

議員御指摘の外交史料展に併せた講演会については、外交史料館職員に加え、学識経験者なども交え、充実したシンポジウムを史料展開始直後の11月4日に開催することを予定しております。この日は休日ですので、多くの皆さんに参加いただきやすい講演会としていきたいと考えています。

また、外交史料展の展示内容をわかりやすく理解いただけるよう、期間中に外交史料館職員に直接説明いただきフロアレクチャーも開催する予定としております。

質問4:展示会等への中学、高校の生徒の参加について

「外交史料と近代日本のあゆみ」展は貴重な展示会なのですが、外交史料と聞くと難しいイメージでとらえてしまいがちです。先人が守って来られた外交史実を次世代につなげるためにも、何のために国家間の調印が必要であったかなどを説明する解説文を、やさしく、わかりやすい表現にして、小・中学生や高校生、お年寄りに受け止めてもらいやすいものでなければならないと思うのです。

ここで「明治の日本外交」を語る前に、最も大切なところを話しますので、後の教育長の答弁でも、この質問を聞いて思いを聞かせて欲しいと思います。

明治の新国家を創るために、日本の各地を歩き、人と人を結び付けた坂本龍馬は、無念にして明治の世を見ることなく亡くなりました。

しかし、彼の側で新しい世を創るために懸命に龍馬を助けた陸奥陽之助(後の陸奥宗光)は、やがて龍馬の描いた新国家の「夢」を自分の夢として描き、努力に努力を重ねて達成したのが不平等条約の改正でした。

龍馬の「夢」、宗光の「夢」が明治の世であり、それを守るために費やした時間が明治の日本外交そのものなのです。新国家を創る「夢」をあきらめなかった“両雄”がいて、令和の時代の今に引き継がれているのです。

「外交史料と近代日本のあゆみ」展は、次世代の青少年に「夢」や「希望」を“両雄”のようにあきらめず、強い心を持ってもらう素晴らしい教材として示されると信じます。「外交史料と近代日本のあゆみ」展を親しみやすい“楽しい展示会”として受け止めてもらうために、解説文を楽しく読みやすいものにしてほしいのです。

歴史好きの文学者だけが来館する施設設定ではなく、家族、夫婦、カップルなどに来てもらえる“楽しい「外交史料と近代日本のあゆみ」展”をお作りいただきたいのです。

県外からのご来館者を呼びかけるのも必要ですが、地元県民に親しまれる文化施設での展示会でありたいと思います。

また、この取り組みは、来たる国民文化祭にも必ず役立ちます。“楽しい和歌山国民文化祭”につながるのです。どうか宜しくお願い致します。

この精神を理解して、開催に合わせて実施するフロアレクチャーや記念講演会は、県内の中学生、高校生にも鑑賞と共に話を聞いてもらいたいと思います。

特に県内の中学生、高校生に学習してもらう意義は大きいと思います。和歌山市内の全高校生、全中学生に、近代美術館の展示会に全員が鑑賞に訪れるようお勧めいただきたいと思います。

この点に関して、教育長にお尋ねいたします。

答弁者:教育長

展示会等への中学、高校の生徒の参加についてでございます。

郷土の偉人、陸奥宗光元外務大臣の功績に触れる機会となる明治外交史料展の見学や、日本の外交史等についての専門家から直接意見を聞くことは、大変有意義であり、郷土の偉人、先人から学ぶことを通して、近現代の歴史を理解することは大切なことであると考えております。

外交史料展、また、それにあわせて開催されるフロアレクチャーなどを、ふるさとや歴史に関する学習に十分活用するよう、市町村教育委員会とともにすすめてまいります。

(要望)

この解説文は「文化学術課」と「県教育委員会義務教育課もしくは文化遺産課」と協議によって製作するのが望ましいと思いますので、お願いいたします。またこの「外交史料と近代日本のあゆみ」展を国民文化祭のPRに大いに活用して欲しいと思います。言い換えれば、「外交史料と近代日本のあゆみ」展を外務省外交史料館と共同主催するプレイベントと捉え、全国にPRする絶好の機会として欲しいのです。国民文化祭の前夜祭的な意味合いの大展示会として活用を図ることを考えてみてはどうでしょうか。これは要望といたします。