活動報告・レポート
2026年4月30日(木)

ふるさと教育のあと

和歌山県立高校の教育者と懇談したときの話です。

「和歌山県ではふるさと教育やふるさとに愛着がある教育を行っていますが、県外に進学してしまうと進学先で就職するので地元に戻ってきません。教え子が成長して活躍してくれることは嬉しいのですが、和歌山県に戻ってきてくれないことは少し寂しさがあります。せっかくふるさとを愛する教育を行ってきても戻ってくれない。戻りたいけれど希望する就職先がないなどの理由で、県外で就職、定住してしまうと故郷への思いも薄らいでいくことになります。教育者として寂しい氣持ちになります」と話してくれました。

これまで大学生など若い人と話をしてきた中で感じることは、和歌山県に戻りたいけれど希望する就職先がないことが地元に戻ってこない最大の理由だと思います。首都圏に進学すると、総合商社やメガバンク、航空会社や外資系企業など希望する企業の本社がずらりと並んでいます。そんな環境で就職活動をしている学生が和歌山県に戻りたいと思っても、戻る企業がないのです。

今だったら情報系やAI系企業なども就職希望先になると思いますが、残念なことに和歌山県内にはありません。やはり大学生が希望するような企業に進出してもらうことが必要です。公務員か家業を継ぐという選択をした学生以外、有力企業を誘致しない限り地元に戻って来ることはありません。

これでは若い人が流出したままですし、単に人口減少という問題ではなく産業構造の問題になります。和歌山県が産業構造の転換に乗り遅れたことや、新産業を生み出せなかったことが弱みになっています。

そう思うと、ふるさと教育とは何なのか、ふるさとへの愛着を持ってもらう教育とは何なのかとなります。小学校から高校まで和歌山県で教育を受けた生徒が県外に出て、県外で生活をする時間が経過するとふるさとへの想いは消えてしまうように思います。帰省した時には「ふるさとは懐かしいなぁ」と思いますが、再び都会に帰ると日常が待っていますから、ふるさとを想う余裕はなくなります。そんな生活環境が続くことで、やがて就職し生活の拠点となる場所が自分の居場所になってしまうのです。やがて和歌山県民が東京都民や大阪府民へと変わっていくのです。

勿論、その子どもは東京都民であり大阪府民ですから、親が生まれ育った和歌山県のことは知りませんし愛着もないと思います。このような社会文化とも言える現象は、長期間続くと常態化してしまうので、なかなか戻すことは難しくなります。

戻ってきてもらうためには、有力企業の進出や新産業の創出が必須です。これ以外にふるさと和歌山県に戻ってもらえる手段はないのです。働きたいと思う企業があることでリターンは期待できますが、働きたいと思える企業がないのに和歌山県に戻ることはありません。この本質を認識しなければ、例え就職フェアやUターンフェアを開催したとしても効果はありません。

また近年は若い人たちが転職するケースが増えていますが、これはキャリアアップやステップアップのためであって、ふるさとに戻るためではありません。現在の転職は自分が望む企業への移籍ですから、今の会社よりもさらに挑戦できる企業、自分が成長できる企業を志向しています。都会でキャリアを積んできた人材が、セカンドキャリアを形成するための企業は和歌山県にはありません。残念なことですが、この現実を踏まえて対策を打つ必要があります。

ここ数年は毎年1万人が減少している和歌山県です。もう小手先だけの対策でお茶を濁している時間はありません。