元銀行員との話
元銀行員の方々と懇談した時の話です。
「企業の成長の角度を上げるためには出資を受けること、投資を受けることが必要です。銀行からの融資も大事ですが、それだけでは成長の角度を上げることはできません。企業にやる氣があれば資金が必要になります。大企業であれば資金投資に対して銀行は融資で支えてくれますが、小さな企業の場合、担保力に見合った融資を受けられますが、それ以上の融資はよほど成長が見込まれる事業計画が必要となります。
そこに明確な目標を定めることは必須です。例えば5年後に年商100億円を目指す。そのために新規に首都圏を中心に50店舗を出店させるなど、目標の具体化が必要となるのです」という話です。
なるほど、銀行融資だけでは成長曲線を描くことはできないので、出資か投資を受け入れることが必要となります。但し、成長している企業でなければ投資も出資も投資家はしてくれません。何故なら投資家はリスクを伴っているからです。
基本的なことですが用語を説明します。
投資(エクイティ投資)とは株式取得などを通じて資本参加することで、企業には返済義務はありません。出資とは株主として企業の資本金を増やす行為です。
どちらも返済不要の自己資本を増やすこと、リスクを取れる資金という性格を持ちます。
銀行融資だけでは爆発的成長は難しいので、この元銀行員が伝えたかったことは「担保頼みの融資ではなく、成長ストーリーを描け」ということだったのです。つまり将来CFで返せる成長投資であるか。自己資本は十分であるか。財務レバレッジを理解しているかを見なさいと言っているのです。
さて民間企業の投資や出資を、和歌山県の財政に例える視点で見ると面白いのです。財政構造の本質を企業で例えると、地方債=銀行融資。基金取り崩し=内部留保の食いつぶし。成長投資=エクイティ的政策となります。和歌山県は現在、借入+基金取り崩し型運営であり、税収増の構造改革が弱いと言えます。
ここに「県債=銀行融資」モデルの限界が見えてきます。和歌山県の令和8年度一般会計予算は 約6,499億円です。この予算編成に際して財政調整基金約125億円を取り崩しています。そして令和10年度に県基金枯渇が懸念されています。
つまり県債は将来の税収=返済能力を元にして発行されます。しかし人口減少下では将来税収が伸びないことや社会保障費が増えることから、借金だけでは構造的成長は起きなくなります。これは企業論と同じです。
もう少し詳しく説明すると、和歌山県の令和8年度一般会計予算は約6,499億円。ここに財政調整基金を約125億円取り崩して編成しています。仮に同規模の取り崩しが継続すれば、令和10年度前後で基金枯渇の可能性があります。これは一時的な景気循環ではなく、構造問題なのです。
和歌山県の人口構造は、2024年推計人口は約90万人。2040年推計は約75万人で約15万人の人口減少が予測されています。つまり税収基盤は縮小方向です。
一方、歳出構造は硬直化しています。現在の歳出構造を見ると、社会保障関連経費は増加傾向にあり、公債費は高水準を維持しています。そのため投資的経費は抑制傾向にあります。和歌山県債残高は概ね1兆円規模です。地方債は必要な制度ですが、地方債とは将来税収の前借りなので、人口減少局面での借入依存は企業で言えば「成長なき借入拡大」になります。
さて「出資」にあたるものは何か、地方自治体におけるエクイティ的発想は国の大型政策資金を呼び込むことに該当します。例えばデジタル田園都市やGX投資、そして観光再生などがあります。また最大規模の事例として大阪市の「大阪IR」は民間の大型資本を呼び込むモデルです。これは「自治体が借金する」のではなく民間事業者がリスクを取る仕組みです。これらから分かるように和歌山県が全部借金するのではなく「民間事業者が収益リスクを持つ」。これが自治体版エクイティです。
和歌山県の場合、県債削減だけでは縮小均衡となる。基金取り崩しは延命措置に過ぎない。成長戦略がないと財政再建は不可能であることが言えます。つまり「借金削減」より「税収創出モデル」が重要となるのです。


