秋のウォーキングで、和歌山市吉原の中言神社から名草山まで歩きました。参加者は7名で、見所、ビューポイントなどを案内してもらいながら山頂を目指しました。スタート地点の中言神社は名草戸畔を祀る社で有名です。この地域を支配していたと言われる名草戸畔ですが、神武東征でこの地に入った皇軍と戦となり敗れたとされています。名草戸畔の軍は強かったことから、神武天皇は蘇ることを恐れ、身体をみっつに刻んで別々のところに埋葬したとされています。宇賀部神社は頭を祀り、杉尾神社は胴を祀り、千種神社は足を祀るとされています。
神社では秘められた歴史の彩を感じながら説明を聴きました。秘められた歴史と言うのは、記録として残っているものは現存していないためで、名草戸畔が支配していたことや神武天皇の戦などは口碑としてこの地に伝わっているものです。
唯一の記録は日本書紀の「旧暦6月1日、軍が名草邑に着き、そこで名草戸畔という名の者を誅殺した」という一行の記述だけです。
説明によると、地元では名草姫と名草彦の男女がいたとされていますが、別の説では名草戸畔とは特定の人物の名ではなく「名草の長」という地位を表す呼称であったとも伝えられています。歴史の謎の一つなので、今さら特定することもなく、名草戸畔が支配していたこの地を歩いて歴史を味わうことがお勧めです。名草山自体がご神体とされているので、中言神社から名草山までのウォークは歴史を感じる山道という感じです。
歩き始めると竹藪からいきなり急な坂道へとつながります。目指すのは名草山山頂ですが、緩やかなコースと急なコースを選択することができます。私たちは行きの道はウォーキングを楽しむために時間がかかりますが緩やかなコースを選び、帰り道は急なコースを選ぶことにしました。もう一つの理由は、緩やかなコースは和歌山市を眺めるポイントがあるという点です。山頂を目指す途中、いくつかのビューポイントがあり、そこで和歌山市の景観を眺めながら写真を撮影していきました。名草山から見渡す和歌山市はまさに絶景です。
万葉人が和歌浦を景勝地として詠んだのは、この美しい地形と海岸だったと思います。秋晴れの下、眼下に眺める和歌山市は絶景でした。名草山から眺めた街並みは県外の人に誇れる景観だと思います。今日、初めて眺めた眺望ですが、日本遺産の和歌浦に相応しく「美しい」の一言です。
説明を聴きながら思ったよりも早く山頂に到着したのは、語りが楽しかったからに相違ありません。観光地もそうですが、説明してもらいながら歩くことで楽しさも学び方も違ってきます。地元の言い伝えやビューポイントを知らないで現地に行くと、景勝地であっても深さはありません。やはり地元の人に説明してもらうことで、その地の良さが分かります。
今回、南海電鉄が竈山神社から中言神社を訪れ、名草山をウォークする企画をしていることから、一緒に参加してくれました。ところどころ写真を撮りながら「案内チラシ用の写真です」と話していましたが、今日のウォークの写真を取り入れたチラシができることも楽しみになりました。
山頂に着いて昼食をいただきましたが、山頂からの絶景を眺めながら、心地よい風を感じ、歩いた時の汗が乾く感じのする中での昼食は、やはり「美味しい」ものでした。和歌山市の秋の一日をウォークで楽しむことができました。身近なところに、これだけの歴史とウォーキングコースがあることに驚きましたし、和歌山市の景観の素晴らしさと秋の風を感じることができた時間となりました。


