活動報告・レポート
2025年9月4日(木)
スチューデント・サポート・フェイス
スチューデント・サポート・フェイス視察

佐賀市にあるNPO法人「スチューデント・サポート・フェイス」を訪ね、代表理事の谷口仁史さんから話を伺いました。

谷口さんは地元佐賀大学在学中から、ボランティアで不登校や引きこもりの子ども達のアウトリーチ活動に取り組んでいました。アウトリーチとは、待ちの姿勢ではなく自ら現場に赴き、子ども達と向き合う活動のことです。

谷口さんは教育学部のため、当初は教師を目指していたようですが、不登校や虐待を受けている子ども達の支援のためにはアウトリーチ活動が必要だと思い、卒業後、教師の道を選ばず、学校の外から子ども達を支援することを考え、1人でこの活動を開始しました。

このような社会的孤立の子ども達を支援するには専門性だけでは不足しており、ここに柔軟性と機動性が必要となります。行政は専門性がありますが柔軟性と機動性に欠けていることから、NPO団体として行政と協調した活動を行っています。現在は、これまでの経験から従来型の取り組みに限界があることを真摯に受け止め、現場の実態に即した組織体制を整えて活動しています。

具体的には多重困難な事例に対応するため、人員を整えてチームで対応することが原則だと言うことです。現在は課題が深刻化、複合化していることから、単一分野の専門性を有した人だけで課題を解決することは難しく、チームとして29の有資格者と連携を図りながら課題解決に取り組んでいます。ここでいう有資格者とは、臨床心理士やキャリアコンサルタント、弁護士や精神科医などで、この方々とチームを組み、家庭教師方式のアウトリーチを構築しています。

この専門性を備えた現場体験はノウハウとして組織に蓄積され、多重困難な課題に対応することが可能となっています。もちろん失敗することもありますが、失敗してもそれに対応していくことがノウハウになるので、さらにチームとして成長を遂げている組織です。

スチューデント・サポート・フェイス視察

支援活動の基本は価値観のチャンネルを合わせること、子ども達との関係性を重視し、お兄さん、お姉さん的支援員を積極的に活用しています。そのため大学生も所属し、彼、彼達はアウトリーチの経験を持った上で教師になったり、社会福祉関係の仕事に従事することで、このチームの一員として活動しています。とにかく組織、人材育成、アウトリーチ、他の団体との協働、行政との連携などを行い、驚きの連続のような活動をしていることが分かりました。

これだけの活動をしていることから、2015年にはNHK番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」に「寄り添うのは、傷だらけの希望」をテーマに、子ども、若者訪問支援の活動が取り上げられました。その番組の冒頭部分を拝見しましたが、現場重視の活動こそ私たちに必要だと感じさせられました。

子ども達と向き合う入り口は専門性ではなく、子ども達と関わる姿勢、つまり関係性が重要になります。そのため年代の近い20代から30代のチームスタッフが約60%占めています。「現代社会の課題に氣づいた我々の世代が、覚悟を持ってこの課題を解決する」そう話してくれました。

ところで、引きこもりや虐待を受けた子ども達の約61%は、過去に相談や支援を受けた経験があり、解決できずに現在に至っている背景があります。このNPOはそんな子ども達が支援対象になるので、専門性だけでは解決できないことを理解してチームとして活動しています。

また、人材育成に関しては、具体性のある資料を基に研修を行っています。過去にあった事例の再現VTRで学ぶなど、実践的な研修を行っている事例を紹介してくれました。研修では失敗もありますが、それをどうリカバリーしていくのかを学び、実践することでノウハウとして蓄積されていきます。

この研修会には、県内外から多くの方々が参加しているので、和歌山県からも研修機会を求めてはどうだろうかと思いました。代表理事の説明を聞いて、現代社会の孤立の深刻さに驚きましたし、それに対応している谷口代表の活動の凄さには、ただただ驚きました。

成果のある視察となりましたこと感謝いたします。