医師とAIに関する話を交わし、とても楽しい時間を過ごすことができました。
医学生に課題を課してレポートの提出を求めてレポートの提出を受けても、学生が考えたものかAIに書かせたものかの見分けがつかないということです。「判定ソフトもありますが、結局は分からないのです」という話です。そのため「レポート課題にしても意味がなくなっている」というものです。レポートの代わりに、面談して意見を聴くなど理解度を図る方法が変わってきているようです。
基礎学力があってAIを活用することは良いのですが、基礎がない状態でAIに解答させていては力がつかないと思います。現在のAIのレポートは経験豊かな先生でも見抜けないレベルなので、授業やテストによる学力の判定は難しくなっているように感じました。
でも「今の学生はAIを活用できなければならないので、悩ましいところです」ということです。それは医学の常識で誰でも理解している部分はAIに書かせても良いので、そのうえに立って自分の知識や経験を論文に織り込むことが重要なことです。仮に基本的な80パーセントをAIに書かせたとしても、核心の20パーセントは自分で考えて仕上げることが大事なことです。「学者として譲れない部分がある」ということです。
確かに、それがなければ論文とは言えませんし、医学知識も技術も磨くことにはなりません。患者さんに寄り添える医師にはならないと思います。
このようにどの分野でもAI活用が図られていますが、映画の分野でも同じだと聴いたことがあります。ハリウッドでは数年先には全てAIで映画を作ることができるとも言われています。登場人物もAI、背景もAI、ストーリーもAIが作る時代が訪れるとも聴くことがあります。主役の俳優の出演料は高額になっているので、AIを登場人物にすれば人件費の負担は軽減されるので、リスクヘッジになるということです。人が登場しない映画は味気ないと思いますが、AIの映画に慣れてしまうと当たり前の時代になっていくようにも思います。ハリウッドでトム・クルーズ以降、超人気俳優が登場しないのは「そのためではないか」の都市伝説もあるように、AI活用の仕方や、人とAIの関わり方を考える必要があります。
また既にフェイク写真や動画が出回っていますが、人を陥れる手段として使われていることが問題です。これまではその人の写真など作成で使う映像が必要でしたが、今では写真がなくてもAIが指示する通りの人物を作成してくれます。元の写真がなくてもフェイク動画の作成が可能なのです。それが撒かれてしまうと、真実のように思う人がいるので、そこから噂が拡大して信用が落ちることが現実になります。名誉棄損などで訴えたとしても、結論が出るのは数年先なので、その期間、失墜した信用は取り戻せなくなるのでダメージを受けることになります。AIは使う人の良識やモラルが必要なので、使い方の問題が発生しています。
AIツールを正しく使うと良い結果を出せますが、悪用されると社会も個人も混乱します。
何にせよ、私たちはAIと共存する社会を生きていますから、正しく使うことと自分の仕事で成果を上げるために使うことです。人の心がAIを通じて社会に発生しますから、くれぐれも自分の心に潜んでいる怪物やお化けを創り出さないようにしたいものです。
緩和ケア病棟に勤めている医療関係者の方が、夜遅くに私たちが意見交換をしている飲食店に入ってきて曲の練習を始めました。二階で話し合いをしていると、一階からピアノ曲が聴こえてきました。自然に聴こえてきた曲は「栄冠は君に輝く」と「巨人の星」でした。
「練習に来させてもらいました」と言って入ってきたのですが、練習している曲がライブで演奏する曲ではないので尋ねてみたところ「明日、患者さんに聴いてもらう曲の練習なんです。患者さんは高校時代に甲子園に出場した経験があり、『栄冠は君に輝く』を聴きたいとリクエストがあったのと、プロ野球チームの巨人ファンなので『巨人の星』の練習をしているところなんです。
その方と野球の話をするととても喜んでくれるのと、この『甲子園の歌』を演奏すると笑顔になってくれるので、絶対に明日、聴いてもらいたいと思って練習しています。緩和ケア病棟ですから、あと何日ぐらい生きられるか分からないので、喜んでもらえる音楽を演奏して笑顔になってもらいたいと思っています。
しかし『巨人の星』は聴いたことがないので初めて演奏しています。患者さんにも歌ってもらいたいので、キーに合わせて楽譜をアレンジしています」と話してくれました。
患者さんの笑顔のために、そして患者さんに喜んでもらうために曲の練習をしている姿勢に感銘を受けました。医療従事者は患者さんや人に見えないところで患者さんに喜んでもらえるための努力をしています。とても素敵な志と行為だと思います。それは医療従事者としての使命感だけではなく、人としてやるべきことをやる優しさです。
医療技術と共に患者さんに寄り添う優しさを持ち合わせてこそ、医療従事者だと思います。お金や時間に関係なく患者さんのために努力をしている医療従事者の姿勢に感銘を受けると共に、この人と患者さんを応援したくなりました。