活動報告・レポート
2025年5月6日(火・祝)
枡本敏水彩画展
枡本敏水彩画展
枡本敏水彩画展

枡本敏先生の水彩画展を鑑賞しました。先生は元公立中学校の美術教師で、今回が10回目の個展になります。枡本先生は現場主義で、全ての絵画は現場で描き上げています。現場で写真撮影を行い自宅で仕上げる画家もいますが、先生は現場で描くことを徹底しています。その理由を聴かせてもらうと「現場で描くことで空気感や温度感が絵に反映できると思いますし、私は現場で絵を描いている時に出会った人と話をすることを楽しみにしているからです。現場で出会った人との話の内容も絵に反映できているように感じます」と答えてくれました。

そんな視点で水彩画を観ると、季節感や温度感を感じられますし、先生と話をしながら作品を眺めている途中「この作品の登場人物と会話しているような雰囲気がありますね。実際の光景と共に先生とこの方が話したことが書かれているようで温かさを感じます」と話したほどです。説明を聴きながら鑑賞すると、夏の風景を描いた水彩画は気温の高さが感じられ、秋の季節の作品ではやや熱気を帯びた風の動きが感じられました。暑いときは暑さを凌いで書いている場面が想像できますし、秋の絵画は少し残暑が残る中でも少し涼しげに秋らしさを表現しているように感じます。

枡本敏水彩画展

作品は和歌山市内の知っている地名が描かれていますが、見慣れた場所でも視点が異なるので、普段見ている光景とは違った景色の中に引き込まれていきます。今回の作品展で特徴的なことはテーマを決めて角度を変えて描いていることです。例えば複数のミカン畑を描いていますが、背の高さに合わせて光景、高い位置からの光景、畑の中からの光景ではミカン畑の見え方が全く違いますから、絵の主役がミカン畑になっていたり人になっていたり、古い造りの家屋になっていたりします。視点を変えると光景が異なるのが不思議であり、画家の視点と感性のおもしろさを感じました。

田村画伯

訪問したアトリエでの田村画伯との懇談の中から一部紹介します。

1.アトリエで仕上げにかかっている作品を見て尋ねました。「元がないものをイメージして書くことは大変な仕事ですね」。

→芸術家の仕事は無から有を生み出すことです。今は何も存在していないものを創り出すことはやりがいがある仕事です。

2.私が描いた絵を見て琴線に触れたアーティストが、その作品をイメージして曲を作ってくれることがあります。ここでも無から有を生み出しています。一つの作品を創り上げることでこの連鎖が起きます。

→この絵画を見た人、ここからイメージした曲を聴いた人もまた、琴線に触れて何かを生み出すことにつながります。私たちも無から有を生み出す力が備わっていると思います。

3.これまでと異なる作風の絵を見つけたので尋ねた時の答えです。

→依頼を受けたらどんな作風の絵でも書けます。プロですから当然ことです。

4.これだけの作品を生み出していること。キャンバスではない大きな作品を書いていますが、作品作りはどこから発想を得ているのですか。

→絵を描き始めておよそ30年かな。イメージする力とデッサン力ですね。生きているように描くようにしているので枠からはみ出ているので大きな作品になります。これまで天井画や壁などにも書いていますし、寺社仏閣、公共施設や福祉施設などに奉納した作品は100点以上にのぼります。天井でも壁紙でも紙以外のものにも書けます。

田村画伯

大きな絵は迫力が違いますし、息をしているようで語りかけてくる力が違います。田村画伯の絵を観た人は、作品の中で生きているような姿から力を感じると思います。今春の個展で新しい作品に出会えたことに感謝しています。