
ワカヤマフォトクラブ展を鑑賞しました。今回が30回目を迎える歴史ある同クラブの写真展です。毎年案内をいただき鑑賞しています。会長および会員の八尾さんに説明をしてもらいながら作品を鑑賞できました。
会長は「写真は一瞬の芸術です。同じ場面でも、同じ写真を撮影することはできません。天候や時間によって撮影対象は姿を変えますから、同じものはありません。そこが楽しさになっています」と話してくれました。
写真は作者のイメージと感性によって現実のものになりますから、同じ場所に撮影に行ったとしても、同じテーマで作品をつくるとしても同じ作品は生まれません。同クラブの6月の勉強会は「春」がテーマになっていますが、会長曰く「テーマが春なので桜が多くなると思いますが、それぞれ違う作品なので楽しみです」ということです。
テーマは「春」ですから、春を迎える時期に会員さんにはテーマが通知され撮影を行っています。「春」をイメージして撮影対象を選定していると思いますが、果たしてどんな作品が勉強会で提出されるのかを心待ちにしているようです。
同じテーマでも人によって思い浮かべるものが違いますから、そこが作品作りの楽しさであり難しさだと思います。そして勉強会で人の作品を見て、本人から説明を聴くことで、自分と異なる発想を知り、自分の感性として取り込むことができるのです。自分の感性を大切にしながら人のイメージを自分のものにすることで、作品の幅が広がると思います。同クラブのメンバーは、毎月の勉強会を通じてそれぞれが作品のレベルアップを図ってきたと思います。会場を訪れた方から「凄い作品が並んでいます」との声が聴こえてきましたが、作品に込めた作者の意図を想像しながら鑑賞するとこができました。

また八尾さんの作品の説明では「トルコの町並みの壁です。作品名は『壁』そのものですが、私はこの壁を見て触れて歴史を感じました。日本にはないトルコの歴史を感じてもらえたらと思います」と話してくれました。
もう一つの作品は「未知への道ですが、これはベルギーの美術館の入り口の光景です。美術館の入り口のポスターは、日本と異なる文化の入り口のようであり、私は未知のものに出会える喜びを感じました。作品に『未知の道』と名付けましたが、未知のものに出会えることは感性を高められるので、皆さんにもその未知の世界への道を感じてもらいたいと思います」と話してくれました。
どちらも異国の歴史を感じる作品で、日本で見たことのないものだけに、遠い成果とそれぞれの国が歩んできた歴史への想像が膨らみます。
八尾さんは続けて「私のパソコンには数千枚の写真をストックしています。時期とタイトルで選択できるようにしているのですが、撮影した時は良いと感じなかった写真でも、今、見てみると『これは良い』と思うものがあります。年齢を重ねることで感じるものが違ってくるのです。歴史や文化の奥深さは今の年齢になって感じられるものがあり、当時、見つけられなかった重さや深みを感じられる写真が出てきます。その時のことを思い出して想像できる写真は良い作品になると思います」と話してくれました。
作者もその時によって感じ方が異なりますし、見る人によっても作品を見た感じ方が違います。写真は流れる時を止めた世界を描くもので、止めた時間をゆっくりと眺めることができるものですから、感性を高めることでそこに発見があると思います。
作者の説明は止めた時間の世界を感じ取るヒントをくれていると思います。説明があるのとないのとでは鑑賞の中身が違ってきます。案内してもらったことに感謝いたします。