
岬町の宝樹寺を訪れ、住職から寺院内にある赤龍と阿弥陀如来の金屏風を見せていただきました。作者の田村画伯も寺院に来てくれて屏風の説明をしてもらいました。この金屏風絵は思っている以上に大きく絵に迫力があります。
二点の金屏風を同時に作成したのは、寺院の依頼もあったのですが、動と静を表現するためです。赤龍は動、阿弥陀如来は静で、二つを並べると動と静を感じることができます。
以下は田村画伯の説明です。
「赤龍は得意としていますが、依頼を受けて屏風に書くのは簡単ではありませんでした。屏風は凹凸があるので、絵が仕上がった時をイメージしなければなりません。平面と異なり広げた時に凹凸があるので、奥行きと凸の部分に龍のどの部分を持ってくるか構図を考える必要がありました。龍の動きに迫力がでるように構図を考え、まず下絵を仕上げて凹凸に貼り付け構図を修正していきました。
そして龍の鱗は一枚ずつ描いていくのですが、動きを表現するために一枚ずつ色合いを考えています。近い部分は濃い赤色に仕上げ、しっぽの部分は薄い赤色に仕上げて躍動感を出しました。

赤龍は内側に眠る情熱を呼び覚まし、目標に向かって突き進むエネルギーを授けてくれる存在です。エネルギーを充実させるためにも、赤龍を見てエネルギーを受け取ると良いと思います。
龍は再生と変容のシンボルであり、中国では死と再生を象徴する想像上の生き物として崇められています。私の作品の中では苦労した作品の一つであり、金屏風の金色を生かしながらも赤龍を引き立たせる作業を楽しみました。宝樹寺の依頼のお陰で代表的な作品になりましたし、金屏風と赤龍のバランスを見て欲しいと思います。そしてスピリチュアルな寺院の雰囲気を演出していると思います」と説明してくれました。
寺院の中での赤龍の存在感は圧倒的で、室内の静かな佇まいを情熱的な雰囲気にしてくれます。
住職さんは「ここに訪れる人に驚きを感じてもらえる、そして再生と変容を感じてもらえる絵画を飾りたいと思っていました。ただ知り合いに画家がいなかったので、ご縁をいただき田村先生を紹介してもらいました。最初にこの部屋の四方に飾っている四天王を書いてもらいました。素晴らしい出来栄えだったので、次に玄関の上に飾っている天女を描いてもらいました。

そして今回、赤龍と阿弥陀如来をお願いして金屏風に描いてもらいました。どちらも依頼した通りの、それ以上の最高の出来栄えに満足しているので、田村先生には感謝しています。
檀家さんにも満足してもらっています」と話してくれました。
あたたかく迫力がある金屏風に圧倒されましたし、住職さんと作者から説明をいただけた幸運に感謝しています。金屏風絵の構成の難しさを感じましたし、あるだけで存在感があり静かな室内に動を持ち込めているように感じます。まさに命の再生と生き方の変容を感じることができました。
宝樹寺にはもうひとつ凄いものがあります。それはナウマンゾウの化石です。マンモスと表現する方が分かりやすいのですが、その牙や歯などが保管されています。ナウマンゾウは凡そ36万年前から2万8千年前まで生息していたゾウで日本と中国の一部で発見されています。この化石は友ヶ島の北側の海で発見されたもので、鑑定の結果、ナウマンゾウの化石であることが分かったのです。


この貴重な化石は寺院の中で管理されています。貴重な化石の保管場所にも案内していただき説明を加えてくれましたこと感謝いたします。