
令和7年消防出初式に出席しました。毎年出席させてもらっていますが、今回は趣向が大きく変更されていました。オープニングから消防団員が登場してゲストの芸人さんと掛け合いをしていましたが、これまで脚光の当たっていなかった団員さんが舞台で挨拶をすることで親しみが持てました。

また消防団の皆さんが出演した寸劇は楽しくて為になるものでした。消防団の歴史を学ぶために和歌山市の消防団員が江戸時代にタイムスリップして、江戸の火消し誕生の話を聴きます。火消しを組織化したのは徳川吉宗公であり、江戸の火災を鎮火するために町人組織を作ったのです。江戸時代の火消しは消火ではなくて、家屋を壊して延焼を防ぐことを主にしていたので現代とやり方は異なりますが、自衛消防が大事であることと自衛消防団の登場は現代に通じるものがあります。
消防の歴史を検索したところ、次のような記述がありました。
「八代将軍吉宗が江戸南町奉行の大岡越前守に命じ、町組織としての火消組である店火消を編成替えし、町火消『いろは四八組』を設置させたことが今日の消防団の前身であるといわれています」。
また江戸時代に町火消の各組が用いた旗が纏(まとい)と呼ばれています。この「まとい」を火災現場の屋根に立て団員の士気を高めたと言われています。
本日の式典で和歌山北消防署の消防員が「まといの誓い」を発表してくれたのですが、これが力強くて感動するものでした。
この消防員は元々小学校の教師でしたが、学校で授業をしている中で、子ども達が「南海トラフ地震」や「能登半島地震」などの災害に敏感であることが分かりました。子どもであっても巨大災害に不安を感じていることを感じ取り「巨大地震や津波が発生した時に、私は子ども達に何をしてあげられるだろうか」と自問したところ「何もできない」と思い、「子ども達の命を護るために消防員になろう」と決意し、教師を辞して消防員になったのです。
「まだ駆け出しの身ですが、知識と技術を学んで子ども達の将来のために安全な和歌山市を護りたい」と語ってくれました。
この消防員になった経緯と覚悟の語りは力強く「この人は子ども達も和歌山市も、災害から絶対に護ってくれる」と思わせてくれました。式典の中での一番の感動で、自然と拍手が沸き起こりました。小学校の教師を辞して消防員に転職することは、通常ではあり得ないことだと思います。
昨日、高木師から「先入観は可能を不可能にする」の言葉をいただいたばかりですが、まさに先入観を持ってはいけない事例だと思います。教育現場で子ども達と接している中で命の大切さを感じ、命を護るために自分ができることは何かを問い詰めて転職したことは、「先入観を持っては何もできない」ことの現れです。
この覚悟を江戸時代の消防団員のシンボルであり現場で勇気の団員を鼓舞した「まとい」にかけ合わせて語ってくれました。素晴らしい「まといの誓い」の語りに今一度拍手を贈ります。
式典の色合いが強かった従来のやり方から、消防団員と消防員にスポットを当て、寸劇で消防団の歴史を伝えてくれた試みは、消防出初式を見事に現代風にアレンジしていました。
やはり式典は一人ひとりの人が主役です。個人にスポットを当てて顔の見える姿にしたことで、今まで以上に記憶に残る出初式となりました。従来の方式を変えることには勇気が要りますが、時代に沿って見事に変化を成し遂げてくれた関係各位のご尽力に敬意を表します。