活動報告・レポート
2025年1月5日(日)
初釜
初釜
初釜

令和7年新春、永岡先生の初釜にお招きをいただきました。毎年、新春の初釜に招待してもらっていますが、今年もわが国の伝統を感じる年の始まりになりました。先生と会話をしていると、茶道の作法は歴史の中で積み上げられてきたものだと思います。茶道具や掛け軸、茶花などにお客さんを迎える喜びと、大切なお客さんとこの時を楽しみたいという思いが伝わってきます。

お正月につきものの柳ですが「今年の柳は長いものがなくて、例年より短くなりました」と説明してくれるのですが、説明と柳を見て、それだけでどれだけ大変だったか知ることができます。短い柳を束ねることも難しいのですが、風格がありお正月の雰囲気を伝えるため豪華な仕上がりにしています。小さくても柳は重いのですが、花瓶は傾くことなく真っすぐに立っています。この部屋の景色を見るだけで今日の価値があります。お正月特有の茶室の景色であり、ここに来なければ見ることが叶わないのですから。

また迎えてくれた緑のカエルの置物の背中には白い巳さんが乗っています。巳年にお客さんを迎えるために先生が用意してくれたものです。カエルと蛇の組み合わせは本来あり得ないものだと思いますが、この置物では共生させています。自然界ではあまり見られない組み合わせですが、新年を迎えたこの時期に見ると私たちを祝福してくれているように感じます。

先生は「巳年なのでこの置物を用意しました。巳さんが背中に乗っているのが珍しいでしょう」と説明してくれましたが、家元の作でありそこには道を究めるための深い意味があると思います。カエルを大きく、巳さんを小さい姿に描いているのは、常識をそのまま信じないで、自分の感覚を信じて見なさいと言うことでしょうか。あるいは発想を変えて物事を見ることで見えないものが見えてくることを伝えてくれているのでしょうか。とにかく考えさせられるカエルの置物です。

そして茶器です。何十年も新しいままで使い続けられているのはお客さんの扱いも関係しています。無作法にあちこち触り続けると指の油がつくので、それが竹や布の場合は色合いや材質が弱くなってしまいます。お客さんが茶道を嗜み、茶道具を大切に扱うから何十年も新品同様で使い続けることができているのです。勿論、茶道具は使うものですから、劣化するのはやむを得ないことですが、名人が作った茶道具は長く使うことで物を大切にする人の心が現れます。日本人が持つわびさびの心は、人との出会いを大切にすること、自分の元に来た物を大切にすることも、その一つの表れだと感じました。

だから茶道具の作者や由来などを、招いてくれた主に尋ねるのだと思います。歴史や物語を知ることで、その物語に感動しますし大切にしようと思います。知識人にそのことを聴くこと、由来を知ることで、長く語り続けられている伝統やそれに携わってきた先人の心を心に落とし込むことができるのです。

初釜の一席で学ぶこと、知ることがたくさんありました。伝統的な作法は茶人でもない限り普段の生活で使う機会は少ないのですが、いざという時に作法を身に付けていることで、慌てることなく、焦ることなく落ち着いて対処することができます。その違いは小さなものですが、見えない品格になっていると思います。伝統の上で築かれてきた作法は何度も繰り返さなければ身につかないので、その修行の時間の長さが品格になるのだと思います。

永岡先生との会話と説明を楽しみながら新春の時間に浸ることができました。本年もよろしくお願いいたします。

その他
  • 初釜年の初めに当たって大楠に参拝してきました。樟守大神と白龍大神の順に参拝していたところ、クスノキの番人さんと会うことができました。
  • 令和6年末の能登半島支援チャリティトーク&コンサートでお世話になったお店を訪ねたところ「ご縁があって1月2日に大楠にお参りしてきました。強い力を感じたので検索したところ、片桐さんも大楠に参拝していることが分かりました。片桐さんも時々、参っているのですね」と話してくれました。そこから大楠と白龍の話をしたところ「そんな由来があったのですか。和歌山市の歴史は凄いですね」と話は展開していきました。