活動報告・レポート
2024年3月26日(火)
復興の状況
岩手県被災地視察

東日本大震災後の復旧状況の視察のため岩手県を訪ねました。能登半島地震が発生したことから、和歌山県政としても改めて防災対策を重視しています。石川県の視察や能登半島の被災地の視察は控える必要があるため岩手県を訪ねることにしました。

東日本大震災が発生したのは、早いもので今から13年前のことになります。現地に入ると、震災直後に現地入りしたのは昨日のように感じます。当時の瓦礫に埋もれた状況はなく津波に襲われた場所は更地となり、そこにあった住宅は高台に移転され日常を取り戻していました。被災した更地は地元の市が買い取り、市民の方々の高台移転を支援したようです。

岩手県被災地視察 岩手県被災地視察

この被災した場所は生活する場ではなく水産工場や野球場として活用しています。

被災地の復旧は進んでいますが、その後の人口が減少していることや水産業に従事している人が減少しているなど震災前とは違った日常がここにはあります。

岩手県被災地視察

最初に訪れた宮古市田老地区の「たろう観光ホテル」は当時の津波被害に見舞われたままで、ホテルのある海岸部には震災後に14.7メートルの防潮堤が建設されていました。この防潮堤の高さの前提は1000年に一度発生する津波を想定したものになっています。

将来発生する津波を想定して絶対に同じことを繰り返さない覚悟の表れだと思いますから、被害に遭ったホテルをそのまま残しているのは、3.11の津波を将来世代が決して忘れないためのメモリアル的な意味合いもあるのかなと感じました。

そして海岸部には水産加工場が建設され稼働していたので、水産事業も再稼働していることも感じました。

この田老地区の復興方針は創造的復興であり、将来の津波到来に備えて14.7メートルの防潮堤を建設するとともに、居住地域を高台に移転させる計画となっています。根本的方針は、単なる震災からの復興ではなく、未来に向けた創造的復興を目指していくことにしています。

岩手県被災地視察

また陸前高田市に建設されている「いわてTSUNAMIメモリアル」は国土交通省と岩手県が津波被害に遭った土地を購入し、岩手県が建物を建てています。運営は岩手県が直営で行っているように、岩手県知事の思いがこもった津波メモリアルになっています。

館内を県庁職員さんに案内してもらいましたが、東日本大震災のときの国土交通省の活躍について説明してもらいました。津波発生直後の道路は瓦礫の山で、人的支援や物資の運搬に支障をきたしたので、内陸部から海岸部に向かう道路を16箇所選定し、選定した道路の瓦礫を撤去することから始めたそうです。

震災から約1週間で瓦礫の撤去を終えることができたので人的支援、そして支援物資を運び込むことができたのです。

国土交通省と現地事務所の連携により素早い意思決定と対応につながったのですが、その根本にあったのは、被災した現場の状況を意思決定者に的確に伝えたことが挙げられます。当時の本庁の責任者は「状況を把握できなければ責任を取ると言っても取れないのです。もちろん初期行動で失敗すれば辞めることは簡単だったのですが、人命に係ることだったので辞めて責任を取れるものではなかったのです。だから情報を集めてやるべきことを指示しました」という話は責任者の覚悟を感じさせてくれました。

岩手県被災地視察

情報がなければ責任者が判断できない。その当たり前の教訓を学ぶことができました。

なお通常の災害であれば、まず地元の県が被災した道路などの機能を回復させ、国土交通省は後方支援という役割になります。ところが東日本大震災の規模の災害であれば国が乗り出さないことには道路の復旧ができないと考えて直轄で除去作業に当たることになったのです。地元に来ないことには知り得なかった事実です。

また岩手県の防災担当の職員さんとの懇談の中で「能登半島地震の避難所の問題が言われていますが、プライバシーの確保に関してはパーテーションが設置されており、衛生環境に関しては段ボールベッドがあるので、東日本大震災の時よりは避難所のあり方としては進んでいると思います」と話してくれました。

災害対応の経験を繰り返すことによって少しずつ階段を上っていくようなイメージで、防災対策は進歩しているとのことです。トイレの問題、温かい食事の問題、それからベッドの問題、プライバシーの問題に関しても、今回の能登半島地震の教訓を生かすことで、今後の避難所対策に生かすことになると思います。

岩手県被災地視察

また岩手県庁の職員さんは被災地に1週間単位で応援に駆けつけていることも聞きました。宿泊場所は日本航空石川高校の教室で、教室の中に1人用のテントを張りそこで宿泊することになります。

シャワーについてはシャワー設備を学校内に設置しているので、時間を決めて交代でシャワーをしているようです。トイレが不足している問題については、職員さん達は近くの施設のトイレを活用しているそうです。応援についても被災者と同じような環境で作業するので大変ですが、経験を生かした支援と共にノウハウを積み重ねるために現地に赴いているのです。

また岩手県と和歌山県は、東日本大震災と紀伊半島大水害が同じ13年前に発生したこともあり、災害時の支援カウンターパートナーになっています。今回の能登半島地震の支援に関しても、共に日本航空高校の教室を使っているような関係があります。

岩手県での被災地の復旧、復興現場の視察と懇談によって、少しかもしれませんが現状がわかりました。和歌山県の防災対策に生かしたいと考えています。