活動報告・レポート
2016年10月31日(月)
委員会視察
水素の常温液体化

行政改革・基本計画等に関する特別委員会の視察に出掛けます。今日から三日間の行程で、横浜市、千葉県、茨城県、東京都の各地の先進事例の視察を行うことにしています。

委員会視察

初日は、千代田化工建設株式会社を訪問しました。同社は水素を常温で液体化することに成功しています。常温で水素を液体化させることで保管が容易となり、また体積を500分の1程度に圧縮させることから大量の水素の移送が容易になっています。更に常温で管理できることで既存のインフラ設備が活用できるという利点もあります。

現在研究を続けている水素の液体化はマイナス250度程度まで冷やすことだと思っていましたが、それ以上に水素の活用に関する研究が進んでいることを知りました。

水素は危険で扱いにくいエネルギーだと思っていましたが、既に常温で液体化させることに成功しているので、実用化が可能な段階に来ているようです。

後はコスト面と品質の問題があるだけです。コスト面で考えると、水素はどこからでも取り出せるように思いますが、水素だけを取り出すことはコストが高くなるので、中東などの天然ガスなどの産出国から輸入していると説明を受けました。産出国が天然ガスや石油を取り出す時に大量の水素が発生しているのですが、その水素を液体化させているのです。水素を液体化させると低コストで長距離輸送や長期貯蔵が可能となりますから、将来は産出国に大型の水素液体化のプラントを建設する計画です。

つまり既存のタンカーや貯蔵庫、パイプラインなどを使えるので低コストで水素の移送や貯蔵ができることになります。低温で液体化された水素を移送や貯蔵するためには、専用のタンカーや貯蔵庫が必要となることに比べると大いにコスト削減になります。現段階では他の技術よりも実用性に優れた技術だと言えます。

利用方法はLNG火力発電所や水素発電所、水素自動車用のステーションなどが考えられます。夢の水素エネルギー活用がもう現代社会で実現する段階に来ているのですから、驚きとともに早く社会システムに組み込んでいきたいと思います。

ただこの技術にも弱点があります。水素を液体化するに際して、触媒としてトルエンと結びつけて液体化させていることです。産出国で液体化された水素を日本に移送し、利用する段階で水素を液体から気体へと戻す必要があります。その時の水素の純度は99.9パーセントの状態であることです。マイナス250度まで低温化した水素は純粋な水素ですが、この触媒を活用して液体化した水素を気体にした時の純度は99.9パーセントとなっています。火力発電所などで利用する場合、問題は少ないのですが、水素自動車で利用する場合などには純度を更に高める必要があります。活用できる純度は99.99パーセントのようなので、その品質レベルを目指して研究を続けているようです。

将来的には水素を低コストで低温移送、管理できる時代が到来すると思いますが、現代は触媒を活用した常温管理が可能な液体水素の方が利用しやすいと思います。水素エネルギーの利用を加速化させるためにも、常温水素に注目しておきたいと思います。和歌山県は再生可能エネルギーと大型の火力発電所の共存により電力移出県を目指していますから、他に先駆けて取り組みたい技術だと考えています。

重粒子線治療
神奈川県立がんセンター重粒子線治療施設

続いて神奈川県立がんセンター重粒子線治療施設を訪問しました。この施設はわが国で最新の重粒子線治療施設で、全国で5番目に建設された治療施設です。がん治療は、かつてはX線治療、最近は陽子線治療へと推移してきましたが、最新のがん治療は重粒子線です。この分野は日本が世界で最先端を走っていて、重粒子線治療施設は世界で10か所、その内5か所が日本にあるほどです。アメリカは陽子線治療が主流だそうですが、重粒子線治療の方が優れていることに着目し始めていることを聞きました。

がん治療とは、大雑把に言うとがん細胞を破壊することです。がん細胞もDNAが組み込まれていますから、そこに放射線を照射しDNAを破壊することでがん細胞を死滅させています。その方法が放射線治療で、X線治療、陽子線治療、そして重粒子線治療などの方法があるのです。

そのDNAを破壊させる力と体内への浸透力に治療方法によって違いがあるのです。X線治療だと体内の正常な細胞も破壊しながらがん細胞に到達するので、正常な細胞も傷つけてしまいます。副作用があるのはそのためです。そしてDNAは二つの柱を持っていますが、破壊できるのは一本だけなので、生き残ったがん細胞が転移する可能性があります。

陽子線治療は体内の正常な細胞を傷つけないでがん細胞に対して威力を発しますが、力が弱いためやはり一本の柱を破壊する程度の治療になっています。

ところが重粒子線治療の場合は、体内の正常な細胞を傷めないで進み、がん細胞を破壊してくれます。その上、力が強いのでDNAの二本の柱を砕いてくれるのです。二本の柱を破壊されたDNAは復活することはありませんから、がん細胞を死滅させ転移する可能性は極めて低くなります。

神奈川県立がんセンター重粒子線治療施設

和歌山県でも以前から重粒子線治療施設は欲しいと知事に対して要望していますが、建設費が約100億円要することから予算面で実現できていません。しかし和歌山県民の一人当たりのがんの発症率が高いことから、県民の皆さんの命を守るために何としても重粒子線治療施設が必要だと考えています。継続して重粒子線治療施設の建設が実現できるように取り組みたいと考えています。

ただこの施設での治療費は350万円と高額なので、患者さんは高度医療の生命保険に加入している人が中心になっているようです。神奈川県民は30万円ほどの補助制度があり活用できるようになっています。治療費の低価格化が今後の課題となっていることを付け加えます。